ステアケースのパターン形成工程は、既存の製造技術だと非常に時間がかかる。リソグラフィとエッチングによって階段状のパターンを、1段ずつ形成するからだ。例えば32ペアのペア薄膜だと、リソグラフィとエッチングのサイクルを、32回も繰り返すことになる。このことは、3D NANDフラッシュ製造の生産性を悪化させる。
そこで考案されたのが「トリム(Trim)」と呼ばれる、リソグラフィの工程を省く技術である。最初にリソグラフィによってレジストのパターンを形成し、エッチングによってマルチペア薄膜を1段分だけ、削る。従来技術ではここでレジストを剥離する。しかし「トリム」技術ではレジストを残し、エッチングによってレジストの側壁を削って(トリミング)階段の次の段に相当する部分の表面を露出させる。そして再び、レジストを利用してエッチングによってマルチペア薄膜を1段分だけ、削る。これを繰り返す。
同じ「エッチング」だが、レジストのトリミング用エッチングとマルチペア薄膜用エッチングは、厳密には異なる技術である。重要なのは、マルチチャンバーのエッチング装置では、これらの異なるエッチングを1台の装置で実施できることだ。リソグラフィは露光装置を使うので、従来技術ではシリコンウエハーを露光装置とエッチング装置の間で搬送し、各装置へのウエハー搬入と各装置からのウエハー搬出を繰り返さなければならない。これに対して「トリム」技術を使うと、エッチングの装置内だけでステアケースのパターン形成が完結する。このため、生産性が大幅に向上する。
ただし「トリム技術」を駆使しても、32ペアや48ペアといった多層構造に対して一気に階段状のパターンを形成できるわけではない。トリミングでレジストの側壁を削るときに、レジストの厚みがわずかに薄くなる。このため、通常は4回〜8回といったトリミングによってレジストがあまりに薄くなり、パターン形成には使えなくなってしまう。そこで、再びレジストを塗布してパターンを形成するためのリソグラフィ工程が入る。それでも、全てのステップでリソグラフィが入ることに比べると、生産性が大幅に高まるのは確かである。
(次回へ続く)
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