「3101」と「1101」の2つのSRAMを開発したことにより、創業3年目(1970年)にIntelは売り上げを急激に拡大させていく。1970年の業績を記述した年次報告書を見ていこう。
1970年におけるIntelの総収入は424万1253米ドルである。内訳は製品売り上げが393万2517米ドル、利息収入が24万1358米ドル、ロイヤリティー収入が6万7378米ドルとなっている。総収入は前年の7.5倍、製品売り上げは前年の10.6倍と大きく伸びた。
対する総経費は569万1879米ドルである。内訳は販売費が276万6262米ドルで総経費の半分近くを占める。研究開発費は129万7450米ドルで前年とほぼ同じ水準にある。マーケティング費および一般管理費は162万8167米ドル。総経費は前年の約2.3倍に増えた。
総収入から総経費を差し引いた損益は、145万626米ドルの赤字である。赤字は前年の75%に減少した。全体としては、業績がかなり改善されたことが分かる。
1970年には特別利益が発生した。カナダの製造企業(注:企業名は年次報告書には記載されていない)に対してIntelの製造技術を供与する契約を結んだことによる。技術料として50万米ドルを1970年に得ることとなり、経費を差し引いた残りの48万711米ドルを特別利益として計上した。この結果、赤字は最終的には96万9915米ドルにまで縮小した。
1970年10月にIntelは、世界で初めてのダイナミックRAM(DRAM)「1103」を製品化する。「1103」は、メインフレームの主記憶で使われていた「磁気コアメモリ」を置き換えるべく開発した、戦略的な製品である。「1103」がIntelの業績に影響を与え始めるのは翌年、すなわち1971年になる。
(次回に続く)
| 創業1年目 | 研究開発主体で売り上げは「ゼロ」 |
|---|---|
| 創業2年目 | 初めての製品売り上げを計上するも赤字は拡大 |
| 創業3年目 | 売り上げが前年の11倍に急増して赤字が縮小 |
| 創業4年目 | 半導体メモリのトップベンダーに成長 |
| 最終損益が黒字に転換 | |
| 創業5年目 | 収入が前年の2.5倍に、初めての営業黒字を計上 |
| 腕時計メーカーになったIntel | |
| 創業6年目 | クリーンルームに防塵衣がまだなかった頃 |
| 創業7年目 | 「シリコン・サイクル」の登場 |
| DRAMが「特殊なメモリ」だった理由 | |
| パソコンを生み出した「8080」プロセッサが登場 | |
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