Xilinx(日本法人:ザイリンクス)は2019年9月18日、金融業界向け事業に関する記者説明会を開催し、同業界に向けたFPGA関連製品の展開を強化していくことを強調した。
Xilinx(日本法人:ザイリンクス)は2019年9月18日、金融業界向け事業に関する記者説明会を開催し、同業界に向けたFPGA関連製品の展開を強化していくことを強調した。
Xilinxの直近の業績は、非常に好調だ。2020年3月期第1四半期売上高は前年同期比24%増、前四半期比3%増の8億5000万ドルを記録。これで16四半期連続での前四半期比増収を達成であり、約4年にわたって売り上げ成長を継続したことになる。
説明会冒頭、Xilinxバイスプレジデント兼ザイリンクス社長のSam Rogan氏は、業績好調の理由として、5G(第5世代移動通信)インフラ投資の増大とともに、FPGAの応用用途の拡大を挙げ、「車載や産業機器だけでなく、AI(人工知能)が活用されるさまざまな領域でFPGAの利用が増えている。監視カメラや医療機器などさまざまであり、金融業界もその1つ」とする。その上でRogan氏は、「金融業界では、電子商取引やリスク分析、不正取引監視、投資判断などさまざまな領域でテクノロジーが必要になる。デバイスの動作周波数の伸びが鈍り、マルチコア技術も限界が見えつつある中で、高速、低遅延の処理を提供できるFPGAに対するニーズは金融業界でさらに高まると期待している。Xilinxとして、金融業界の課題を解消する“ソリューション”の提供に注力していく」と述べた。
説明会では、XilinxデータセンターBUグローバルビジネス開発部門金融テクノロジー担当のAlastair Richardson氏も登壇。同氏は、Xilinx入社前は大手金融機関に勤務した経験を持ち「あまり公にはされていないが、金融業界でもFPGAが活用されている。私自身も、10年ほど前から高速、低遅延で、急に発生する爆発的な処理にも対応できるという利点からFPGAを使用していた。これまでは、金融業界におけるFPGAの活用は限定的だったが、さまざまな用途でFPGAを応用できる可能性があり、そうした可能性を広めるためにXilinxに入社した」と振り返る。
金融業界におけるFPGAの応用可能な範囲としてRichardson氏は、ナノ秒単位の処理が要求される「高頻度取引」、マイクロ秒単位の「電子取引」、分単位の処理ながら正確さが要求される「グリッド計算」、さらにさまざまな領域で活用が進む「AI/機械学習処理」や「ビッグデータ解析」を挙げる。
特に高頻度取引については「ナノ秒単位の処理が行えるのは、FPGAが唯一の解決策になる。競合のGPUには、ネットワークポート自体がない時点で、遅延が発生するためだ」とする。
こうした金融業界のさまざまな領域でのFPGAの活用促進を図るため、Xilinxはデバイス単体ではなく、周辺回路/部品を含めたボードレベルに仕上げた製品をラインアップするとともに、C++など高位言語に対応した開発環境の整備、提供を進める。「これまで金融業界でのFPGA活用を阻んだ要因が、開発、設計の困難さだった。ボードレベルのアクセラレーションカード『Alevo』や、開発環境『SDAccel』でそうした課題は解決される」と語る。
「金融業界でも、クラウドの利用が始まっているが、一部処理は、オンプレミス(自社運用)として残るケースが多く、クラウドとオンプレミスの間で処理を行き来させることもある。SDAccelは、オンプレミスのベースとなるAlevoだけでなく、AWS F1 インスタンスなどのクラウド/FPGA-as-a-Serviceもサポートし、1度の開発で、両方のプラットフォームにも対応できる」とする。
またRichardson氏は、さまざまなベンチマーク結果を示し、Alevoの性能的な利点も示し、FPGAが金融業界のさまざまな処理に適したデバイスであると主張した。
Richardson氏は「金融業界でのFPGAの活用を促進していく上で、金融取引量の大きな日本市場は重要な市場。日本の金融機関も世界市場で勝ち抜くために、積極的にテクノロジーを取り入れようとしつつあり、Xilinxとして日本の金融市場に注力していく」と述べた。その一環として、Xilinxは2019年9月19日付で、データセンター向けのアクセラレーションカードであるAlevoの日本市場での販売拡大を目的に、フィックスターズをValue Added Resseler(VAR/付加価値再販業者)として認定。販売サポート体制の拡充を行っている。
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