Edge Impulseの共同創業者であるShelby氏とJan Jongboom氏は、ともにArmの出身だ。前身のスタートアップであるSensinodeは、2013年にArmに買収されている。Sensinodeは、低消費電力のメッシュネットワークからインターネットゲートウェイシステムまでのIoT(モノのインターネット)システムを提供しており、Edge Impulseと同様に、組み込み機器から通信インフラまでをカバーするエンドツーエンドのプロバイダーだった。
Shelby氏によれば、Armのマイコンの処理能力が加速度的に向上していくのを目の当たりにしたことが、Edge Impulse誕生のきっかけになったという。
「数年前、1秒間に4000万回の演算を行っていたことに気付いたが、ユーザーは1時間に1回温度データを送信するだけだった。その当時は、マイコンは十分に活用されていない資産だった」(Shelby氏)
これをきっかけにマイコン上で機械学習を動作させるプロジェクトが始まり、最終的にはGoogleの「TensorFlow Micro」プロジェクトに組み込まれることになった。
その後、既存の機械学習ツールを使用するためには、「データサイエンスの専門家、機械学習アルゴリズムの専門家、組み込みの専門家、コンパイラの専門家が一つになっていなければならない」ことに気付き、両氏はTinyML専用のツールチェーンを構築することとなった。
Edge Impulseは、典型的なSaaS(Software as a Service)ビジネスモデルを採用している。大企業の場合はサブスクリプションが必要で、エンジニアチーム間のコラボレーション、大規模なデータセットでの作業、モデルのバージョン管理、セキュリティなどの機能が含まれている。
「われわれの目標は、今後数年間で、同プラットフォームの無償ユーザーを数百万人規模まで拡大することだ」とShelby氏は述べる。
そのためには、開発者やエンジニアだけでなく、マネジャー層に対してもTinyMLで何が可能なのか(画像処理は可能でも、リアルタイムのビデオ処理は難しい、など)を説明する必要があるだろう。さらに、機械学習では、IoTアプリケーションとは異なるデータを必要とすることも理解しておく必要がある。「IoTのデータは、長期間にわたってサンプリングされたデータであるという点で、機械学習とは大きく異なる。そうしたデータは、機械学習に必要なものではない。われわれに必要なのは、高解像度の完全な生データであり、非常に優れた真値(ground truth)を持つ小さなサンプルである」(同氏)
ただShelby氏は、「技術としてのTinyMLは、非常に大きな進歩を遂げた。2019年の時点で商業利用が可能なところまで技術的には完成させたが、業界の方がまだ技術に追い付いていない。一般的な理解が得られていない」と指摘した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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