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MarvellがInnoviumを11億米ドルで買収へクラウドデータセンター市場で成長拡大

Marvell Technology Group(以下、Marvell)が、Innoviumを約11億米ドル相当の株式で買収する。Marvellはこれまで4年間をかけて、データセンターや高速5Gネットワークに必要とされる、さまざまな種類のICを提供することが可能なサプライヤーとしての位置付けを確立するという、新たな方向性の実現を目指してきた。

» 2021年08月17日 11時30分 公開
[Brian SantoEE Times Japan]

 Marvell Technology Group(以下、Marvell)が、データセンター向けイーサネットスイッチを手掛ける米Innoviumを約11億米ドル相当の株式で買収する。Marvellはこれまで4年間をかけて、データセンターや高速5G(第5世代移動通信)ネットワークに必要とされる、さまざまな種類のICを提供することが可能なサプライヤーとしての位置付けを確立するという、新たな方向性の実現を目指してきた。そして今回、Innoviumから新たな製品シリーズを入手することにより、こうした市場分野において大きな後押しを受けられることになる。

 Innoviumの看板製品は、イーサネットスイッチだ。同社がゼロから開発したスイッチシリーズ「TeraLynx」は、特にデータセンターをターゲットとしている。Teralynxスイッチシリコンは、大規模バッファーや、動作解析をサポートするテレメトリー、低レイテンシ、ラインレートのプログラマビリティなどを提供することが可能だ。同社は、「Teralynxは、1W当たりの性能として業界最高レベルの電力効率を実現する」と主張している。

 Marvellは過去4年間にわたり、賢明な買収を相次いで実現することで成長を遂げてきた。同社がデータセンターをターゲットとする方向へ転換する上で最初の重要なステップとなったのが、2017年に60億米ドルで買収したCaviumだ。Marvellはこの当時、HDD/SDDストレージコントローラーや、ネットワーキング/ワイヤレスコネクティビティシリコンなどの製品で広く知られていたが、Caviumの買収によって、マルチコアプロセッシングやネットワーキング通信、ストレージコネクティビティ、セキュリティチップなどを入手することができた(参考記事:MarvellがCaviumを60億米ドルで買収

 また、Marvellは2019年に、2つの企業を買収した。まずは、GLOBALFOUNDRIESがASIC設計サービス会社として分離独立させたAvera Semiconductor(以下、Avera)を6億5000万米ドルの前払いで、そしてAquantiaを約4億5000万米ドルで、それぞれ買収している。Averaは現在、MarvellのカスタムASIC部門として運営されており、複雑かつ高速、高性能なASICを、特にクラウドデータセンターや5G、自動車などをはじめとする多彩な用途向けに最適化している。(参考記事:GLOBALFOUNDRIES、ASIC事業をMarvellに売却)またMarvellは、Aquantiaの買収により、同じく特にデータセンターをはじめとするさまざまな用途に向けた、高速イーサネット接続の分野における専門技術を手に入れたのだ。

 さらに2020年末には、Inphiを買収すると発表した。買収金額は約100億米ドルと推定され、手続きは2021年4月に完了している。Inphiは、高速アナログ/ミックスドシグナルコンポーネントや光学サブシステムを専業とするメーカーだ。Marvellは既に、高速カッパー接続の製品シリーズを保有していたが、Inphiの買収によって、データセンターや5Gネットワークの分野で重要性が非常に高くなっているシリコンフォトニクスデバイスの製品シリーズを手に入れた(参考記事:Inphi Acquisition: Marvell Bets Growth on Cloud, 5G:MarvellがInphiを買収、クラウド/5G市場での成長拡大へ)

 Marvellは、「Inphi買収は実際のところ、Innovium買収の前触れになったといえるだろう。Marvellは、クラウドデータセンター市場において成長拡大を遂げており、Inphi買収によってそれがさらに勢いづくことになった。ハイパースケールデータセンターに向けた、高基数で性能を最適化した専用のスイッチシリコンを開発する戦略的重要性は、現在ますます高まっている」と述べる。

 今回の買収により、Marvellは2026年までに年平均成長率(CAGR)15%で成長し、20億米ドルに達するとされている市場に参入することになる。同社によると、ティア1のクラウド顧客が既にInnoviumをサプライヤーとして選択しており、これによって2022年には売上が大幅に増加する、という。もちろん、Marvellはその顧客の詳細は明かしていない。

 Marvellは、PAM4およびコヒーレントDSPチップセット、DCIモジュール、セキュリティ、オフロード、アクセラレーションのためのDPU、ArmベースのカスタムサーバCPU、フルカスタムASIC、フラッシュおよびHDDベースのストレージ、そしてInnoviumのクラウドに最適化されたイーサネットスイッチなどのポートフォリオによって、「クラウドのために選ばれる半導体ソリューションパートナーと位置付けられる」としている。

 Marvellは、Innoviumの最高技術責任者(CTO)であり創業者であるPuneet Agarwal氏が同社に加わると発表した。Innoviumの最高経営責任者(CEO)であるRajiv Khemani氏は、Marvellの顧問を務める。

 Marvellは、11億米ドルでInnoviumを買収するが、その資金調達のためInnoviumの約1億4500万米ドル相当の現金および現金同等物を使用する。Innoviumの資金を使用することによって、純費用は9億5500万米ドルに減少する。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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