Ericssonは、電力網につながずに5G(第5世代移動通信)接続を実現できるよう目指している。その代わりに、レーザーを使ってワイヤレスで電力を基地局に供給するという。同社はそのような基地局を初めて開発できるよう、レーザーを専門に手掛けるPowerLight Technologiesと連携している。両社は米国ワシントン州シアトルで概念実証(PoC)試験を実施した。
Ericssonは、電力網につながずに5G(第5世代移動通信)接続を実現できるよう目指している。その代わりに、レーザーを使ってワイヤレスで電力を基地局に供給するという。同社はそのような基地局を初めて開発できるよう、レーザーを専門に手掛けるPowerLight Technologiesと連携している。両社は米国ワシントン州シアトルで概念実証(PoC)試験を実施した。
実証試験では、Ericssonの5Gミリ波基地局の1つである「Streetmacro 6701」に電力を供給するため、PowerLightの光学ビームレーザーが用いられた。Ericsson North Americaのネットワーク製品ソリューション部門を率いるPaul Challoner氏は、米国EE Timesに対し「試験では、数百ワットの電力を数百メートルにわたり供給できた。これはイノベーションだ」と語った。
この技術は、今日の環境発電関連の新興企業による取り組みというよりも、どちらかといえば約120年前に提案された二コラ・テスラの壮大な計画に類似している。テスラの計画は、無線による電力伝送というものだった。
高出力レーザーが光起電性パネルを介して光子を電力へと変換する。そのようなパネルは、太陽光発電システムにおいて太陽光を電力に変換するために用いられている。これと同じ原理がレーザー送電に適用されている。変換された電力は、基地局のバッテリーと配電システムに送られる。
PowerLightは2019年から、同様の電力ビーム試験を米軍とともに行ってきたが、EricssonによるPoCでは、この画期的な技術の商業的用途の1つが初めて示された。
レーザーを介して基地局に電力を提供することで、通信インフラを稼働させるために必要な時間とコストを削減できるようになる。Challoner氏は「実際、基地局に電力を届けるのは大変な事だ」と述べた上で、通信事業者が基地局までケーブルを敷かなければならないことや、変圧器や地域の配電インフラのアップグレードが必要になる可能性があることに言及した。その上、電気技師が来るまで12カ月も待たなければならない可能性すらあるという。
Challoner氏は「基地局への電力供給を無線で行えるのは、業界がここしばらくの間挑戦してきた5Gの世界的な展開を実現する上で非常に有用だ」と述べた。
EricssonとPowerLightによるPoCは、今のところまだ初期の段階にある。とはいえ、Ericssonにはこの技術を市場に投入するための計画とロードマップがある。Challoner氏は「われわれは今後数年のうちに、この技術を商用化する計画だ」と述べた。
Ericssonがこの技術についてまだあまり明らかにしたくない要素が1つある。それは、レーザーによる配電には、正確にどれくらいの電力が必要なのかという点だ。Challoner氏によると、今回のテストシステムでは、PoC基地局に数百ワットを供給することができたという。
「しかし、これは100%の効率ではない。基地局に何百ワットもの電力を供給するためには、発信地でそれ以上の電力を送らなければならないのは明らかだ。それでも、この技術は効率的で、性能も徐々に向上している」(Challoner氏)
Challoner氏は、現在のシステムの効率について、「まだまだ初期の技術だ」とし、正確な数値は明かさなかった。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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