メディア

3次元積層モジュール「SoIC」の高性能化を支援する高放熱技術福田昭のデバイス通信(340) TSMCが開発してきた最先端パッケージング技術(13)(2/2 ページ)

» 2021年12月28日 09時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]
前のページへ 1|2       

積層するダイの枚数増で発熱が急速に増大

 TSMCが気にかけているのが、シリコンダイを3次元積層する「SoIC(System on Integrated Chips)」技術のスケーリングだ。SoICでは、積層するシリコンダイの枚数を増やすことでスケールアップを図る。複数のモジュールを収容するパッケージ全体では、SoICモジュールの消費電力密度が突出して高くなってしまう恐れが少なくない。

12枚のシリコンダイをSoIC技術で積層したモジュールの外観[クリックで拡大] 出所:TSMC(Hot Chips 33の講演「TSMC packaging technologies for chiplets and 3D」のスライドから)

 そこで開発を進めているのが、従来の「伝導水冷」を超える性能の水冷技術である。通常の伝導水冷では、冷却水が通過するパイプラインを内蔵したヒートシンクと、シリコンダイあるいはパッケージを熱的に接続する。接続には熱抵抗の低い材料(「TIM(Thermal Interface Material)」と呼ぶ)で構成したゲルやフィルムなどを使う。

 TSMCが開発している水冷技術は、シリコンダイ(放熱用ダイ)でシリコンダイ(電子回路を作り込んだ通常のダイ)を冷却するというものだ。放熱用のシリコンダイは、表面に細長い柱(ピラー)のアレイ、あるいは溝(トレンチ)のアレイを形成してある。放熱用ダイの表面に水を通すことで、シリコンダイ(電子回路を作り込んだダイ)の発熱を逃がす。

放熱用シリコンダイによる水冷の概要。放熱用シリコンダイの表面に細長い柱(ピラー)のアレイ、あるいは溝(トレンチ)のアレイを形成し、冷却水を流す[クリックで拡大] 出所:TSMC(2021 VLSI Technology Symposiumの講演「Ultra High Power Cooling Solution for 3D-ICs」(講演番号JFS1-4)のスライドから)

 ここで重要なのは、ピラーおよびトレンチの形成にエッチング技術ではなく、ダイシングソー技術を使うことだ。ダイヤモンドカッターによってウェハーに切り込みを入れることで、ピラーあるいはトレンチのアレイを作る。エッチング技術に比べると加工のコストが低い。

 ピラーアレイあるいはトレンチアレイの幅は200μm、間隔は210μm、深さ(高さ)は400μmである。シリコンウェハーは直径が300mm、厚みが750μm。テスト用ダイ(TTV:Thermal Test Vehicle)と放熱用ダイ(Lid)はウェハーレベルでハイブリッド接合する。接合部のTIMはシリコン酸化膜である。

(⇒次回に続く)

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.