TSMCが気にかけているのが、シリコンダイを3次元積層する「SoIC(System on Integrated Chips)」技術のスケーリングだ。SoICでは、積層するシリコンダイの枚数を増やすことでスケールアップを図る。複数のモジュールを収容するパッケージ全体では、SoICモジュールの消費電力密度が突出して高くなってしまう恐れが少なくない。
そこで開発を進めているのが、従来の「伝導水冷」を超える性能の水冷技術である。通常の伝導水冷では、冷却水が通過するパイプラインを内蔵したヒートシンクと、シリコンダイあるいはパッケージを熱的に接続する。接続には熱抵抗の低い材料(「TIM(Thermal Interface Material)」と呼ぶ)で構成したゲルやフィルムなどを使う。
TSMCが開発している水冷技術は、シリコンダイ(放熱用ダイ)でシリコンダイ(電子回路を作り込んだ通常のダイ)を冷却するというものだ。放熱用のシリコンダイは、表面に細長い柱(ピラー)のアレイ、あるいは溝(トレンチ)のアレイを形成してある。放熱用ダイの表面に水を通すことで、シリコンダイ(電子回路を作り込んだダイ)の発熱を逃がす。
ここで重要なのは、ピラーおよびトレンチの形成にエッチング技術ではなく、ダイシングソー技術を使うことだ。ダイヤモンドカッターによってウェハーに切り込みを入れることで、ピラーあるいはトレンチのアレイを作る。エッチング技術に比べると加工のコストが低い。
ピラーアレイあるいはトレンチアレイの幅は200μm、間隔は210μm、深さ(高さ)は400μmである。シリコンウェハーは直径が300mm、厚みが750μm。テスト用ダイ(TTV:Thermal Test Vehicle)と放熱用ダイ(Lid)はウェハーレベルでハイブリッド接合する。接合部のTIMはシリコン酸化膜である。
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