シャープの2022年度売上高は2兆5481億円(前年比2.1%増)、営業損失257億円(同1104億円減)、当期純損失2608億円(同3347億円減)、2016年度以来の赤字決算になった。
スマートライフ部門は、調理家電や洗濯機などが好調で増収だったが、円安、原材料の高騰などで減益となった。8Kエコシステム部門は、ビジネスソリューションや米州・アジア向けテレビなどが好調で増収だったが、国内向けテレビの不振、テレビ事業における一過性費用の発生などで減益となった。ICT部門は、PC需要の下振れをソリューション事業などでカバーし、売上高は横ばいだったが、円安の影響で減益になった。ディスプレイデバイス部門は、車載向けを除いて需要が低迷し、大幅な減収減益となった。エレクトロニックデバイス部門は、販売が好調で増収増益だった。
2023年度の見通しは、売上高2兆5600億円(同0.5%増)、営業利益400億円(同657億円増)、当期純利益100億円(同2708億円増)を見込んでいる。シャープの赤字決算は2023年2月の段階で公表されており、今回の決算発表にサプライズはなかった。だが、大手電機8社の中で最も厳しい決算結果になった。ディスプレイ部門の赤字を減らすだけでなく、ここを収益の柱にできるかどうかがポイントだろう。
ソニーの2022年度売上高は11兆5398億円(前年比16.3%増)、営業利益1兆2082億円(同59億円増)、当期純利益9371億円(同549億円減)、売上高/営業利益ともに過去最高を記録した。
ゲーム&ネットワークサービス分野は、ハード/ソフトともに好調で円安も増収に貢献したが、開発費の増加などで減益になった。音楽分野は、為替の影響やストリーミング売上の増加により増収増益となった。映画分野は、為替の影響で増収だったが、事業譲渡益700億円の計上などがあった前年度からは減益になった。エンタテインメント・テクノロジー&サービス分野は、為替の影響などで増収となったが、テレビの販売が伸び悩み減益となった。イメージング&センシング・ソリューション分野は、為替の影響やモバイル機器向け需要の増加などで増収増益となった。金融分野は、ソニー生命の減収があったが、不動産売却益の計上や不正送金に係る資金回収などで増益となった。
2023年度の見通しは、売上高11兆5000億円(同398億円減)、営業利益1兆1700億円(同382億円減)、当期純利益8400億円(同971億円減)を見込んでいる。過去最高益を更新した2022年度からは若干の減益を予想しており、決算発表後の株価はやや値下がりした。しかし、会社計画が保守的なだけで、全体的にネガティブな印象はなく、高収益を維持できる点はむしろポジティブに評価できるのではないだろうか。
日立製作所とソニーは、2023年度の見通しが保守的だと判断されたのか、株式市場の評価はややネガティブだったようだ。ただ、高収益を維持できる体制が安定しており、筆者としてはポジティブな印象を受けた。NECと富士通は、株式市場の評価はおおむねポジティブだったが、中長期的にはもっと高みを目指してほしい企業だと思う。今後の見通しがやや心配なのは、非上場化に舵を切った東芝、収益の柱が大赤字になったシャープである。この難局をどう乗り切るのか、当面は目が離せない。
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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