2023年度通期の業績予想については、売上高は下方修正、営業利益は上方修正した。売上高は期初(2023年4月時点)の予想から1.2%減の1兆6200億円とした。円安の影響で樹脂多層基板(メトロサーク)や高周波モジュールでは増加を予測するものの、コンピュータ市場の回復遅れや景況感の悪化でコンデンサーの需要減を見込むほか、パワーツール向けリチウムイオン二次電池でも減少するとみている。一方、営業利益は同22.7%増の2700億円に修正した。南出氏は「営業利益の上方修正は、主に為替の影響によるものだ。固定費の削減や収益性の改善も進めている」と説明している。
事業環境認識については、2023年10月時点では「全般的に部品需要は下振れていて、特にパワーツール市場やPC周辺機器市場で需要回復が遅れている。モビリティ向けでも値下げ圧力が高まっている」(南出氏)とした。一方、材料価格やエネルギー価格は、期初の想定よりも若干減少しているという。
村田製作所は、部品を搭載するスマホやPC、自動車の需要予測も実施している。2023年度は、スマートフォンは前年度から3%の微増になると予測。需要が低迷する中、ミドルレンジ/ローエンド端末の比率が上昇する見通しだという。PCは需要回復ペースが緩やかなことから、2022年度実績よりも減少すると見込む。自動車は、2022年度実績比で7%増加すると見込む。特にxEV(電動車)は同30%増加になると予測している。
村田製作所社長の中島規巨氏は、足元の市況について「エレクトロニクス業界全体の需要低迷は底を打ったと感じているが、力強い回復力は感じていないのが実情だ」と言及。「今後はIoT(モノのインターネット)機器やウェアラブル機器に関する需要の成長に期待し、製品の準備を進めている」と述べた。
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