ロームはPCIMEurope2024初日の2024年6月11日に現地で記者会見を行い、同社取締役常務執行役員パワーデバイス事業担当の伊野和英氏がSiC(炭化ケイ素)パワーデバイスの新製品の概要や事業の展望などを語った。
ロームはパワーデバイス事業において、2024年から2027年までの年平均成長率(CAGR)を24.7%という目標を掲げている。これは予想される市場のCAGR8.2%を大きく上回るペースだ。同社の成長のけん引役とするのがSiCで、SiC事業は、BEVの市場鈍化を織り込みつつも売り上げ目標を2025年度に1100億円に、2027年度にはさらに倍の2200億円へと上げる目標を立てている。
今回の記者会見で伊野氏はSiC事業において特に重要な技術として、次世代SiC MOSFET、8インチウエハー化、そして新たなモールドタイプSiCパワーモジュールの3つを挙げた。
まず、次世代SiC MOSFETについては、現行の第4世代から規格化オン抵抗(単位面積当たりのオン抵抗)を30%低減する第5世代品を2025年にリリース予定としている。
さらに既報の通り、伊野氏はこの会見において、第5世代品のリリース以降、2027年には第6世代、2029年に第7世代と2年ごとに新世代品を投入する計画を明かした。これまで2025年から3年後となる2028年のリリース予定としていた第6世代品について、1年前倒して2027年にするうえ、第7世代についても同様にその2年後の2029年に投入する予定だ。伊野氏は、2年ごとの投入でもそれぞれで「(前世代から)オン抵抗を30%削減する見通しが立った」と説明。通常約5年ごとという自動車の開発サイクルに向けて機会を逃さぬよう、新世代品投入の間隔を短縮し競争力を高めることを狙う。
もう一つの重要な技術として挙げた8インチウエハー製造能力については、筑後工場(福岡県筑後市)で2025年から量産開始予定で、徐々に規模を拡大していき2025年度にはロームのSiCパワー半導体生産能力は、2021年度比6.5倍となる見込みだ。さらに2026年以降には、ソーラーフロンティアから取得した宮崎第二工場(宮崎県国富町)の8インチラインも稼働する方針。これらによって2030年度には2021年度比35倍にまで生産能力が拡大できる見込みだ。なお、宮崎第二工場では2024年中に8インチSiC基板の生産を開始する予定だ。
8インチへの移行によって旺盛な需要に対応するとともに、より低コスト化も実現する。8インチへ移行すると、6インチと比較して面積当たり20〜30%程度のコスト改善が見込まれるという。前述の第5世代品は、当初から8インチでの製造を予定している。ロームは今回、筑後工場で製造した、デバイス形成後の8インチSiCウエハーを会場で初公開していた。
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