PCIM Europeには毎年パワー半導体メーカーの他、受動素子部品や磁性材料、テスト機器メーカーなど幅広い分野の企業/団体が出展する。今回、田中貴金属グループの製造事業を展開する田中貴金属工業および田中電子工業を取材した。
田中貴金属グループは1885年の創業以来、貴金属を中心とした事業領域で幅広く展開している。現在、事業の約8割は産業向け貴金属関連材料だといい、半導体用材料でも幅広い製品ラインアップとおよび長い歴史を持つ。その代表格がボンディングワイヤで、メモリやロジックチップなどで用いられる金ワイヤの他、高電圧/大容量対応が求められるパワー半導体用で需要が高いアルミや銅ワイヤにおいて世界トップクラスのシェアを有しているという。その他にも貴金属めっきや、半導体チップをリードフレームや有機基板に接着する「ダイボンディング材」などさまざまな半導体用材料を扱っている。
今回、会場では、パワーデバイス用途に多く採用されるアルミおよび銅ボンディングワイヤ/リボンの他、パワーデバイス用セラミックス回路基板およびヒートシンクなどの放熱部材への適用が期待されている「活性金属ろう材/銅 複合材」、そしてパワーデバイス用途のシリコンおよび、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)など次世代パワー半導体に対応する銀(Ag)を用いたダイボンディング材などを紹介していた。
パワーデバイス向けの製品をまとめた模型
ダイボンディング材では、高熱伝導と高信頼性の両立が可能なハイブリッド接合タイプと200W/m・Kを超える高熱伝導シンタリングタイプをラインアップにそろえる。
今回会場ではさらに、新たなダイボンディング材として、「AgSn TLPシート」を紹介していた。
AgSn TLP(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)シートの概要[クリックで拡大]
同製品は、Agとすず(Sn)を圧縮成形した独自開発のシート状ボンディング材で、低温で接合可能でありながら、接合後は高い耐熱性を持つという製品だ。展示していたパネルでは250℃で接合後、融点は480℃と高温耐熱性を示していることを紹介していた。さらに低加圧で接着でき、シート状のため大面積の接合も容易に対応可能という利点もあり、パワー半導体用を中心に、ダイボンディング材およびTIM材(熱伝導材料)としての採用を期待しているという。なお、同製品は顧客による評価が行われている段階で、展示会などでの公開は今回が初だという。
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