表2は2019年にAppleが買収したIntelモデムの最後のチップセットと、iPhone 16eに搭載されているApple C1のチップセット構成の比較である。ベースバンドプロセッサ、トランシーバー、PMICの3点セットの変化はない。AppleはIntelからモデム部門ごと買収したので、チップセットとして継続開発されたわけだ。パッケージ上のIntelのマルマークが、Appleのリンゴマークになっている。
表3は、Intelとして最後のベースバンドプロセッサとなり、iPhone SE2に採用されたPMB9960とApple C1のベースバンドプロセッサの比較である。Intel製ベースバンドはIntel 14nm世代プロセスで製造されていて、Apple C1 ベースバンドはTSMC 4nmを適用している。14nm → 10nm → 6/7nm → 4/5nmと、14nmと4nmでは4世代の差があり、4nmでは集積密度が大きく上がっているので、C1はざっくりだが、PMB9960よりも2.5〜3倍ほど、回路規模が大きいものになっている!!Apple C1 ベースバンド内部は3基の巨大演算器のクラスターで構成されており、演算器の塊というユニークな構造になっている。
図5は、iPhone 16/16 Pro、iPhone 16eの内部、基板、ベースバンドプロセッサの様子である。前述した通り、2024年9月発売のiPhone 16/16 ProにはQualcommのSnapdragon X71モデムチップセットが採用されている。2025年のiPhone 16eからApple独自のApple C1となっている。Appleが次世代向けにC2、C3の開発を行っていることは間違いないので、2025年秋に発売されるであろう次世代iPhoneなどで、順次入れ替わっていく可能性は高いだろう。またWi-FiやBluetoothも内部は現在Broadcom製だが、Appleの独自開発チップに置き換わっていくようだ。ウワサを広げるつもりはないので、かなり先になってしまう可能性もあるが、実チップで報告したい。
表4は、iPhone 16/16 Proに採用された5GベースバンドプロセッサQualcommの「SDX71M」とiPhone16eのApple C1ベースバンドの比較である(測長したサイズなどのデータあり)。基本構成はほぼ同じで、デジタルプロセッサとDRAMがパッケージ内に集積されている。Qualcommは5nm、Appleは4nmと製造プロセスに違いはあるが、Qualcommチップの方がひと回り小さいものになっている。
さて、いよいよAppleモデムが始動した。今後も継続して観察し、本連載で報告していく。
次回はApple Mac Studio M3 Ultraを報告する予定。先月に引き続き2025年は新チップラッシュでオーバーワーク気味です……。
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