普及を推し進める動きは、各企業の取り組みにとどまらない。同コンソーシアムでは、TransferJetの技術仕様を国際標準化するための活動を続けている(図5)。まず、TransferJet仕様のPHY層とMAC層が、「Ecma International」*3)において標準規格化される予定である。2011年の早い段階に、発行される見通しだ。その後、ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)において、国際標準化の作業を続ける。「海外でTransferJetを紹介すると、『ソニーの独自技術だ』と決めつけられることがあるが、決してそうではない。オープンな技術仕様として普及を促していきたい」(富樫氏)。
このほか、同コンソーシアムでは、映画や楽曲といった幅広いコンテンツを取り扱う際に必要となるデジタル著作権保護(DRM:Digital Rights Management)技術を、TransferJetの技術仕様に盛り込む予定である。現在、どのような著作権保護技術を採用するか、検討を進めている。
ID情報といった小容量データをやりとりするNFC(Near Field Communication)技術や、ワイヤレス給電技術との連携も視野に入れる(図6)。TransferJetにNFCを組み合わせることで、例えば課金認証を容易に処理できるようになる。TransferJetとNFCでは、利用する周波数が異なるため、同一のシステムに比較的共存させやすい。
ワイヤレス給電技術については、まだアイデア段階で具体的な検討に入っていないようだ。「TransferJet技術で重要視したのは、ラフな使用感である。送電側と受電側のきっちりとした位置合わせが必要なタイプのワイヤレス給電技術は、TransferJet技術にはなじまないだろう」(岩崎氏)という意見もある。最近、位置合わせが不要なワイヤレス給電技術として、共鳴型と呼ぶ手法の基礎開発が進んでいる。2010年7月に標準規格*4)が完成した、近接電磁誘導を使う手法では、送電側デバイス(コイル)をモータで移動させることで、受電側端末の位置合わせを不要にする方法が盛り込まれている。
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