パナソニックが開発した60GHz帯無線通信チップセットはWireless Gigabit(WiGig) Allianceの標準規格に対応している。モバイル機器への採用を狙い、消費電力の削減とチップセットの小型化を進めたことが特徴だ。
パナソニックは、60GHz帯を使った無線通信規格の業界団体「Wireless Gigabit(WiGig) Alliance」の標準規格に準拠した無線チップセットを開発した(図1)。特徴は、高速のデータ伝送と低消費電力を両立させたこと。データ伝送速度が2.5Gビット/秒のときのチップセットの消費電力は1W以下と小さい。
これまで消費電力の観点で、60GHz帯の高速通信をモバイル機器に載せることは難しかった。パナソニックの無線チップセットはこの課題の解決を図ったものである(関連記事:超高速無線がSDメモリーカードに載る、パナソニックがWiGig対応モデルを提案)。「業界最小の消費電力を実現した。これを使えば、圧縮された30分程度のハイビジョン映像データを10秒程度でモバイル機器に転送できる」(同社)。
パナソニックが開発した無線チップセットは、60GHz帯に対応したRFトランシーバICと、パケット処理部を含むベースバンド処理LSIで構成している。RFトランシーバICについては、9GHz幅の周波数帯域に対応しつつ、同社従来品に比べてチップ面積を半分に削減した。一方のベースバンド処理LSIでは、動作周波数を上げることなく、汎用プロセッサと高速データ処理回路を最適化することで、低消費電力化を実現したという。
60GHz帯の無線通信技術は、免許不要で最大9GHz幅の周波数帯域が使え、1Gビット/秒を超えるような高速のデータ伝送を実現できるという特徴がある。据え置き型の民生機器には2009年から実用化されてきたが、前述の通り、消費電力が大きいという課題があり、モバイル機器には採用されてこなかった。ここ最近、60GHz帯をモバイル機器に使おうという機運が高まっている。例えば、Silicon ImageやWilocityがノートPCやタブレットPCといったモバイル機器を対象にした60GHz帯無線チップを発表している。
なお、パナソニックは2009年5月に誕生したWireless Gigabit Allianceにボードメンバーとして参加し、規格策定などの作業に関わってきた。同団体は既に、標準規格の1.0版と1.1版を発行している(関連記事)。同団体の規格をベースにした国際標準規格「IEEE 802.11ad」の策定もドラフト5.0版まで進んでおり、2012年内には規格の策定作業が完了する見込みである。
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