MEMSセンサーは、スノーボードからサーフィンに至るまで、今まさに大きな飛躍を遂げようとしている。モーションキャプチャー技術を手掛けるSyrideで事業開発コンサルタントを務めるRomain Lazerand氏は、MEMSを搭載したおにぎり型の軽量デバイス「Sys-Evo」を披露した。これをサーフボードに取り付けると、波の高さや速度、波乗り時間、パドル距離、海水温度、消費カロリーなど、さまざまなデータを取得できるという。
ただ、こうした「スマートサーフィン」のような技術は、ゆったりと楽しみたいスポーツにはなじみにくいように思える。これに対しLazerand氏は、アスリートとしての技能を高める上で、極めて有用な技術だと主張する。
同氏は、「私自身も、このSys-Evoのおかげで自分のサーフィンが安定した。Sys-Evoのデータを参照することで、クロストレーニングを自分のサーフスタイルに合わせて最適化できたからである。人は事前に知ることで精神的にも身体的にも備えられるものだ。Sys-Evoはそれを支援するデータを提供する。私は技術者ではないが、Sys-Evoは実に素晴らしいデバイスだと思う」と述べた。
Sys-Evoは、5年間に及ぶ研究開発を経て実現に至った。極めて軽量であるため、一部のサーファーからは、難しい波に備えてサーフボードの先端部分であるノーズに重さをかけられるよう、もう少し本体の重量を増やせないかとする要望もあったという。
また、実際にサーフィンを行う前に、潮流情報などのオンラインデータを入力しておくことにより、サーファー自身の安全性を確保できるだけでなく、最高の波を捉えられる時間や場所に関する情報も得られるという。
モジュール本体には、9軸の加速度センサーとジャイロスコープ、電子コンパスが搭載されており、水中でも水面上でもデータを収集することができる。
Lazerand氏は、「サーファーは、波の高さや自分の腕前について大げさな自慢話を友人に披露したがる大ウソつきが多い。しかしMEMSのおかげで、そうしたウソを排除できるようになるだろう」と述べ、なかなかうまく波に乗れなかったときに後からSys-Evoのデータを不正に改ざんしようと試みたことさえあると冗談を飛ばした。
しかしLazerand氏によると、必ずしも全てのサーファーがこのような新技術の導入に乗り気なわけではないという。少し慎重な姿勢を見せるサーファーも多いようだ。
同氏は、「Sys-Evoは今のところ、若者層に広く受け入れられている。テレビゲームへの関心が強く、データ収集が可能な環境で育った世代だからだろう」と述べている。
この技術が今後広く浸透するのか、または最終的に消滅することになるのか、今のところはまだ分からない。
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