半導体の在庫は2四半期連続で増加したが、業界アナリストによれば、これは需要が増加していることの証しだという。
米国の市場調査会社であるIHS iSuppliによると、2012年第1四半期の半導体在庫は、2011年第4四半期に続き2期連続で増加したという。ただし、「2012年第1四半期の半導体在庫が増加したのは、顧客からの需要の増加に対応するためである」と同社は分析している。
半導体メーカーの売上高に占めるチップの在庫の比率は、2012年第1四半期は50%だった。2011年第4四半期が47.8%、2011年第3四半期は46.1%だったことから、この割合は増加傾向にあると言える。
IHS iSuppliが発行した半導体在庫に関する最新の報告書「Inventory Insider」によると、「2012年第1四半期と2011年第4四半期の2四半期は、在庫が増加しているという点は共通しているが、在庫が増加した要因と市場予測は、それぞれまったく異なるものになっている」という。
IHS iSuppliの半導体市場調査部門でアナリストを務めるSharon Stiefel氏は、報告書の中で「2011年第4四半期は、欧州のソブリン危機に端を発した不透明なマクロ経済環境や、半導体需要の世界的な低迷を受け、半導体メーカーが抱える在庫が増加した」と述べている。
2011年第4四半期は、半導体メーカーの在庫が増加した一方で、顧客企業の備蓄量は減少した。Stiefel氏は、「これは、需要低迷の兆候である」と指摘する。これに対し、2012年第1四半期は、「半導体メーカーの在庫の増加に伴って、需要が上向く傾向が見られた」(同氏)という。
Stiefel氏は、「半導体メーカーと顧客の双方の在庫が増加しているということは、半導体業界における供給と需要の両サイドが、『エレクトロニクス市場はポジティブに転じる』と確信していることを示す」と指摘している。
IHS iSuppliは2012年3月に、「半導体サプライヤの平均在庫日数は、2011年第4四半期に過去11年で最も高い水準を記録したが、2012年第1四半期は0.5ポイント下がる見通しだ」と発表している。
同社によると、エレクトロニクス分野の流通業者が抱える顧客在庫は、2011年第3四半期には売上高の41.7%だったが、2011年第4四半期には同36.9%まで減少した。2011年第4四半期は、この他にも半導体のさまざまな顧客セグメントで、在庫が減少する傾向が見られたという。
IHS iSuppliは「2012年第1四半期は、半導体の受注が増加し、サプライチェーンの流通も増えた。出荷受注比率(Book-to-Bill Ratio)もパリティ(等価)に近づいており、需要と供給のバランスが整いつつあることを示している。こうした状況に加え、2012年第2四半期にはさらに需要が高まると予想されることから、2012年第1四半期の半導体メーカーの売上高に占める在庫比率が増加したと考えられる」と分析している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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