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台湾OEMベンダーの強みを日本のHEMS/ホームネット分野へ、サーコムの挑戦無線通信技術 HEMS

台湾のOEM/ODMベンダーSerCommの日本法人であるサーコム・ジャパンが、HEMS/ホームネットワーク市場への取り組みを加速させている。同社が打ち出しているのが、「台湾OEM/ODMベンダーの強みを、日本企業のサービスレベルで提供する」という戦略だ。

» 2012年07月30日 08時00分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 いよいよこれから導入が本格化する、宅内エネルギー管理システム(HEMS)やホームネットワーク(関連記事2012〜13年は目が離せない!! 新たな社会インフラ導入へ無線技術の準備整う)。ホームネットワークを対象にした通信プロファイル「ECHONET Lite」の機器認証もスタートし、対応製品を導入する準備が整いつつある。

 日本市場において、いち早く、ECHONET Lite規格に準拠したゲートウェイの製品化を表明したのがサーコム・ジャパンだ。2012年5月に、ECHONET Lite規格に準拠したゲートウェイ「NA900 OEM開発キット」を同年7月25日より提供することを発表した。7月25日には、ECHONET Lite対応ゲートウェイ「NA910」とZigBee/Z-Waveセンサーをセットにした開発キットの受注も開始した(関連記事)。

 「日本国内で、安価かつ容易に導入できるECHONET Lite準拠HEMSゲートウェイを製品化しているのは当社だけ。台湾OEM/ODMベンダーの強みを日本企業のサービスレベルで提供できることを売りに、採用拡大を目指す」(サーコム・ジャパンの代表取締役を務める伊藤信久氏)という。伊藤氏に、サーコム・ジャパンが製品化したHEMSゲートウェイの特徴や同社の強みを聞いた。

図 サーコム・ジャパンの代表取締役を務める伊藤信久氏

「HEMSゲートウェイの先駆者」を目指す

 サーコム・ジャパンの親会社であるSerCommは、主に無線LAN向けの通信機器を製造している台湾のOEM/ODMベンダーである。1992年に設立され、台湾の他に米国やフランス、日本に拠点を有する。無線LAN製品(ゲートウェイ、ルータ)に加えて、最近ではフェムトセル事業の売り上げを大きく伸ばしているという。

 同社が、無線LAN製品やフェムトセルに続く、新たな事業の軸と位置付けているのがHEMS/ホームネットワークの市場領域だ。生活の利便性を高めたり、安心・安全を実現するホームコントロール用のゲートウェイやセンサー、IPカメラ、センサー、管理サーバ用ソフトウェアを用意している。

 現在、HEMS/ホームネットワーク領域の市場の立ち上がりを見込んで、日本国内外のさまざまな企業がこの領域に注目している。このような市場でいかに独自の立ち位置を築くか。サーコム・ジャパンの伊藤氏は3つの点をアピールする。

図 ホームネットワークの全体像

 1つ目は、既存のマンションや住宅に後付けで導入できる、安価で設置が容易な機器を提供していること。例えば、上に挙げたHEMSゲートウェイやセンサー、IPカメラに加えて、日本市場の対象にした「IRエクステンダー」を発売する準備を進めている。これはいわば、赤外線リモコンを使って家電を制御するかのように、遠隔地から家電を制御するためのもの。既に設置されている家電に取り付けるだけで、スマートフォンやタブレットPCを使って、家電を制御したりモニタリングすることができる。

 「節電を目標にHEMS/ホームネットワークを活用する場合、“全員参加”で取り組まなければ大きな効果は見込めない。それには、新築だけではなくて、既にあるマンション、住宅にも安価かつ容易に導入できることが重要だ。当社はこの点を強く意識している」(同氏)。

 2つ目は、乱立する無線通信プロトコルを取りまとめるHEMSゲートウェイを用意したことである。宅内のホームネットワークで使われる無線プロトコルは、携帯通信(3G、LTE)や無線LAN、Bluetooth、ZigBee、Z-Waveなどと多様だ。さまざまなホームネットワークの使い勝手は、このような無線プロトコルの違いを一般消費者に意識させることなく、利用してもらうことに大きく依存する。

 「SerCommは、複数の無線プロトコルを変換・管理するファームウェア技術のノウハウを有する。宅内の複数の無線プロトコルをまとめてインターネット上のサーバに橋渡しするゲートウェイを、安価に提供可能だ」(同氏)と主張する。

台湾OEM/ODMベンダーの3つの強み(左)と、サーコム・ジャパンの独自性(右)。

「日本企業と仕事している感覚で、台湾OEM/ODMベンダーを使える」

 3つ目が、台湾OEM/ODMベンダーの強みを日本企業のサービスレベルで提供するという点である。ここでいう「台湾OEM/ODMベンダーの強み」とは、コスト競争力の高さ、迅速な開発・製造を進める体制などのこと。一方の「日本企業のサービスレベル」とは、少量の生産に対応することや、柔軟な技術サポートなどを指す。

 一般に、この2つは相反する項目だが、台湾のOEM/ODMベンダーの日本法人としての「サーコム・ジャパン」として活動しつつ、日本国内で製品カスタマイズや製造を行うパートナーを作ることで実現した。「顧客は、日本企業と仕事をしている感覚で、台湾OEM/ODMベンダーを使うというメリットを享受できるだろう」(同氏)。

 具体的には、年間で1k(1000個)程度の少量生産にも対応する。用意されたリファレンスボードをそのまま製造するときには台湾で製造し、カスタマイズが必要なときには日本国内のパートナー企業でカスタマイズ開発の作業と製造を担当する。さらに、生産数量が多い場合には、日本国内でカスタマイズしたボードを台湾で製造するといったように、高い柔軟性を持ったネットワークを構築した。

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