Intelは、独自の無線充電技術の開発に力を入れている。Ultrabookに電力を非接触で送信するチップを搭載してIntelベースのモバイル機器を充電できるようになれば、モバイル分野に強いARM勢に対抗することが可能になるかもしれない。
Intelは現在、独自の無線充電技術である「Wireless Resonant Energy Link(WREL)」がモバイルコンピューティングやモバイル通信関連の製品を支える要素になるよう、積極的に取り組んでいる。
IDT(Integrated Device Technology)は2012年8月、Intelと提携してWREL向けの送受信用チップセットを開発すると発表した。同チップセットは、Intelが提唱する超低消費電力のノートPC「Ultrabook」やPC、スマートフォン、スタンドアロン型充電器などに使用される予定だという。
それ自体は有益なことだ。機器ごとに充電器を持ち運ばなくてはならない生活を続けることが、いささか“前時代的”であることは、誰もが認めるところだろう。
とはいえ、技術とビジネスをたくみに組み合わせるのがIntelの常であるから、WRELがどれほど優れた技術だとしても、単純に「(同技術によって)世界に貢献すること」、あるいは「世界市場で売り出すこと」だけを考えているわけではないはずだ。今回もIntelは、このWRELからビジネス面で“うまい汁”を吸おうと狙っていると筆者は確信している。
Intelは、PC用プロセッサの大手サプライヤであるが、フィーチャーフォンやスマートフォン、タブレット端末といった分野には遅れて参入した。この領域では、ARMのプロセッサアーキテクチャや、ARMのエコシステムに参加する企業が幅を利かせている。
Intelが、PC分野における主導的な地位を利用して無線充電技術をモバイル分野にも浸透させるには、どのような手段があるのだろうか。
Intelの無線充電技術は、Ultrabookの複数のモデルに搭載される形で、2013年後半に登場する見込みだ。プラグを差し込んだプレートのような物の上にPCを置くと充電できる――。そのような機能を想像する方もいるだろう。実際、Ultrabookのいくつかのモデルではそういった充電が可能になるとみられている。
例えば、Ultrabookに電力を非接触で送信するチップを搭載しておけば、Intelのプロセッサを採用したスマートフォンが登場したときに、スマートフォンをUltrabookに近づけるだけで充電できるようになる。Intelのプロセッサを搭載したPCにこのような機能を付加すれば、いずれIntelベースのスマートフォンやタブレット端末が発売されたときに、無線充電の面で非常に有利になるだろう。
Intelベースの携帯電話機をUltrabookの隣に置いておけば、出かける準備をしている間にフル充電と同期が終わっている――。そうなれば、どれほど便利だろうか。ただし、残念ながら、「iPhone」やAndroid端末をUltrabookや「MacBook」の横に置いても充電はできない。
Intelのプロセッサ「Atom」とWRELを組み合わせた技術は、ARMやARMのパートナー企業を押しのけ、スマートフォンやタブレット端末メーカーから需要のあるプラットフォームに成長するかもしれない。その可能性は否定できないだろう。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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