無線通信用のトランシーバモジュールなどの設計情報をIPとして提案するInsight SiP。アンテナ部を内蔵した無線通信モジュールを、厚みがわずか1mmのSiPで実現する。
無線通信モジュールの設計開発を手掛けるフランスのInsight SiPは、独自のAIP(Antenna in Package)技術を駆使して、無線通信用トランシーバモジュールなどの設計情報をIP(Intellectual Property)として提案している。アンテナ部を内蔵した無線通信モジュールを、厚みが最大1mmのSiP(System in Package)で実現できることが同社の強みの1つだ。また、パッケージ内にセキュリティチップを取り込んだ無線通信モジュールの開発も進めているという。
同社はこれまで、近距離無線通信技術の1つであるTransferJetをはじめ、携帯電話の最新通信規格であるLTE、低消費電力の近距離無線通信規格Bluetooth Low Energy(BLE)、ハイビジョン映像の無線通信用規格WHDI(Wireless Home Digital Interface)などに対応した無線通信モジュールの設計情報をさまざまな顧客に提供してきた。
同社が最近注力している設計IPの1つが、UWB(Ultra Wide Band)方式を用いた近距離無線通信用トランシーバモジュールである。同社はシリコンチップ単体の設計や無線通信モジュールの製品化までは行わないが、設計情報を顧客に理解してもらうためにSiP技術を使った無線通信モジュールを試作している。UWB方式の近距離無線通信モジュールの試作品は、外形寸法が7×7mmで、厚みが1mmと薄い。このモジュールは、無線チップとベースバンドICを2層構造で積層している。その上部に印刷技術でアンテナを形成し、バンドパスフィルタやバランといったフロントエンドモジュール機能も含めて、1個のSiPに実装している。
Insight SiPのCEO(最高経営責任者)を務めるMichel Beghin氏は、同社の強みについて、「一般的なセラミックのアンテナを用いると高さ(厚み)が2.0〜2.5mmとなる。アンテナを小型化する当社独自のAIP技術により、モジュールにアンテナを内蔵することが可能となり、無線通信モジュールの厚みを1mmに抑えることができる。また、EMI(Electro Magnetic Interference:電磁妨害)ノイズを抑制するためのシミュレーション技術やフィルタリング技術なども持ち合わせている」と語る。
さらに、これからの開発テーマとしてBeghin氏は、「トレーニングウェアやランニングシューズ、ブレスレット、腕時計などに無線通信モジュールを内蔵しようという動きが一層強まっている。そのためにもモジュールの薄型化は重要な要件となる。電源もバッテリレスへの対応が求められることになろう」と述べた。
Beghin氏が、日本市場で期待する用途として挙げたのが、前述したTransferJetやLTE、BLE、WHDIといった無線通信モジュールへのセキュリティチップの取り込みである。「無線通信のアクセスポイント数は増加を続け、2〜3年後にはウイルスやハッカーへの対策がこれまで以上に重要となる。このために無線通信モジュールの直近にセキュリティチップを実装することが安全性を向上するのに最も有効だ」(同氏)。既に同社は、ある顧客と協力してセキュリティチップを1パッケージに内蔵した無線通信モジュールの開発に着手している。
最後にBeghin氏は、日本市場におけるInsight SiPの取り組みについても触れた。同氏は、「現在、日本で活動しているのは営業担当者だけだが、近い将来は日本語で顧客と打ち合わせが行えるエンジニアを常駐させる予定だ」と述べている。
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