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M2M用無線通信モジュールで「高シェア狙う」、u-bloxのビジネス戦略ビジネスニュース 企業動向

u-bloxは、日本市場でのM2M向け無線通信モジュールの展開を強化している。非民生機器市場に特化した製品戦略を掲げ、長期安定供給を実現するため無線通信チップの自社開発もスタートさせた。

» 2013年04月24日 10時00分 公開
[竹本達哉,EE Times Japan]

 GPS/無線通信用モジュールなどを手掛けるスイスのu-blox(ユー・ブロックス)は、日本市場でM2M(Machine to Machine)向け無線通信モジュールビジネスを本格化させている。NTTドコモ、ソフトバンクモバイルといった通信事業者から製品認定を取得し、車載をはじめ、自動販売機、産業機器などの分野で採用実績を積んでいる。「車載、産業機器などの非民生分野に特化し、長期供給を保証できる無線通信モジュールベンダーは少ない。民生機器を除いた領域で高いシェアを狙っていく」(同社日本法人のカントリーマネージャーを務める仲哲周氏)。

主力無線通信モジュールの一つでHSDPAに対応する「LUCY-H100/H200」

 スイスに本社を置くu-bloxの主力製品は、GPSチップ/モジュールである。直近1年間のGPSチップ/モジュール製品の世界出荷数量は2500万個を超え「恐らくGPSモジュールでは世界トップシェアだろう」(仲氏)という。同社GPSモジュールの強さは、車載、産業機器など非民生領域に特化した製品供給体制にある。

 車載、産業機器などの領域では、民生機器よりも高いレベルの信頼性が要求されるだけでなく、製品供給期間も5年、10年と年単位の長期供給が求められる。コスト重視で製品サイクルの短い民生機器市場の要求と車載/産業機器市場の要求を同時に満たすことは難しい。u-bloxでは、徹底して非民生領域に特化した製品作りを展開してきた。

 例えば、GPSモジュールの核となるGPSチップ。GPSチップを供給する半導体メーカーは多くあるが、そのほとんどは数量が見込める民生機器市場を重視している。コストを追求するため、短い期間でチップシュリンクした新製品を投入し、旧来製品の生産を中止する。当然、非民生機器市場での長期供給の責務は果たせない。そこで、u-bloxは、自社でGPSチップを製造し、長期供給が保証できる体制を整えている。「長期供給できるベンダーとして、国内の自動車業界にも広く受け入れられてきた。今では国内全ての自動車メーカーが当社GPSモジュールを何らかの形で使用している」(仲氏)。

GPSに続く事業として無線通信モジュールを立ち上げ

自社開発するGPSチップ「UBX-G6010-SA」。無線通信チップも自社で開発していく

 GPSモジュール市場で一定の成功を収めたu-bloxは、「非民生領域に特化する」というビジネスモデルを無線通信モジュール市場にも適用し、事業規模を拡大させようとしている。

 無線通信モジュール市場への参入は2009年から。第2世代(2G)携帯通信モジュールを手掛けるモジュールベンダーを買収し、その後、第3世代(3G)対応製品も投入し、製品ラインアップを強化してきた。日本市場での展開も積極的で、NTTドコモ、ソフトバンクモバイルといった通信キャリアの要求仕様を満たす製品を順次、開発し、複数の製品で国内キャリアの認定を取得済み。「当然、海外キャリアなどの各種認証、認定も取得済みで、国内外で使えるモジュールがそろう点も当社の特長になっている。今後も、多くの国内キャリアと連携を強めていく」とする。

 非民生領域、日本市場への強いコミットを背景に「国内無線通信モジュール市場でもビジネスは軌道に乗りつつある」という。GPSモジュールで実績のある車載関連市場ではトラックの運行管理システム向けなどを皮切りに、通信機能付きカーナビや電気自動車(EV)での採用が増えつつある。「バッテリーの状態監視などEVは外部通信の必要性が高く、通信モジュールの主力用途になるだろう」と期待を寄せる。

 現在市場投入している同社無線通信モジュールのベースバンドチップは、外部調達品であり、長期供給できる体制は整えているものの、絶対的ではなく、細かなカスタム要求にも応えにくい状況であり、現在、自社製通信チップの開発を急いでいる。しかし、無線通信用ベースバンドチップ開発は、簡単ではない。大手半導体メーカーでもベースバンドチップ事業で苦戦する企業は少なくない(関連記事:ST-Ericssonとルネサス モバイルは、なぜ失敗したのか)。

 これに対し、u-bloxは2012年に、第4世代(4G)通信用のソフトウェアとテストソリューションを開発していた「4M Wireless」と、ソフトウェア定義モデム技術をベースにしたベースバンドチップの設計・開発を専門にする「Cognovo」の2社を買収した。買収費用は日本円にして計20億円程度。百数十億円規模となっているここ最近の大手半導体メーカー間のベースバンド事業売買案件と比べると、その投資額は大幅に小さい。「非常に効率的な開発体制が構築できた。買収した企業は規模は小さいながら、既にテストチップを作製し、動くことを実証している。近い将来に、自社製LTE対応チップを搭載した第4世代(4G)通信モジュールを提供する」とし自社製無線通信チップ実現に向けて自信をのぞかせている。

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