産総研とTASCは、この単層CNTと銅の複合材料を開発した後、この材料を実際に用いて微細配線を作製する研究開発を実施。このほど、配線幅500nm〜100μmの微細配線を作製することに成功した。
配線加工は、CNTウエハーを電子ビームを用いてエッチングした後、2段階電気メッキで銅と合成したという。CNTウエハーのエッチングは、フォトリソグラフィも用いることができるという。2段階電気メッキ工程の製造コストは、1kg当たり30万円程度とし、「一般的な金属メッキに掛かるコストと比べても遜色ないはず」としている。
また産総研などは、金属では難しいCNT複合材料でこそ実現可能な特殊な多段配線も実現。この多段配線は、配線を敷くベースとなる基板(シリコン基板)上に複数の突起を形成し、その突起と突起の空間にCNT合成材料配線をはわすというもの。あたかも、橋脚の上に橋を架けたような構造が実現でき、配線を立体交差させることが可能。橋脚部分となる基板の突起の高さが2.5μmでも配線の導電率がほぼ変化しないことを確認し、十分な絶縁空間を持たせた3次元配線も可能だという。
配線材料として多くの利点を持つCNT合成材料だが、実用化、量産化に向けて課題も少なくない。最大の課題は、現在は、2cm角程度のサイズが限界であるCNTウエハーの大型化。今後も、CNTウエハーの大面積製造プロセスの開発を継続していくという。
同時に、CNT合成材料の特性を生かせる用途の開拓なども並行し、実用化も目指す方針。畠氏は、「高い信頼性が要求される車載用デバイスや大電力を扱うデバイスのバックエンド配線をはじめ、シリコン貫通ビアやインタポーザなどでの応用が考えられる。この材料に興味を持った企業と連携し実用化を目指したい」とした。
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