ピアツーピアベースの仮想通貨である「ビットコイン」が注目を集めている。米国の投資家は、並列コンピューティングを必要とするビットコインによって、新たなプロセッサ市場が生まれると予想する。
「インターネット上の仮想通貨『ビットコイン』は、特殊な並列プロセッサの新たな市場を生み出す」――こう予想するのは、ハイテク部門のベテラン投資家Marc Andreessen氏だ。同氏は、米国のベンチャーキャピタルであるAndreessen Horowitzの共同創設者であり、プリンシパルを務める。
一方、高性能サーバの開発を手掛ける新興企業Rex ComputingのCEO(最高経営責任者)を務める17歳の天才エンジニアThomas Sohmers氏は、Andreessen氏の意見に対して懐疑的な見方を示している。なお、Rex Computingは、ファブレス半導体企業のAdaptevaなどのFPGAやアクセラレータ技術を搭載したサーバを開発している。
Andreessen氏は、米国カリフォルニア州サンノゼで開催された「Open Compute Summit」(2014年1月28〜29日)で行った基調講演で、「ビットコインは、インターネットが登場して以来、初めての“インターネット的なもの”だ」と述べている。「ビットコインは、いわば暗号化されたデジタル情報である。ビットコイン専用のチップ市場には大きなチャンスがあるだろう。これは、1年前には予想もしなかったことだ」(Andreessen氏)。
同氏は続けて、「ビットコインは、インターネット上でビジネスを行うための、初めての実用的な方法だ。取引が安全であることを認証するためにセンターハブや信頼性の高い機関などを介する必要がない。大規模な証券取引から空き部屋の仲介サービスに至る、あらゆるサービスに使われるようになると予想され、非常に大きな可能性を秘めている」という見解を示した。
ビットコインは、「採掘(マイニング)」と呼ばれる高度な並列コンピューティングが必要とされる。Andreessen氏は、「マイニングは、並列処理を利用する非常に特殊なものだ。今後しばらくは、専用のカスタムチップが数多く開発されると考えられる。ビットコイン向けに最適化されたデータセンターも、既に構築されている」とOpen Compute Summitの参加者に向けて語った。
一方、Rex ComputingのSohmers氏は、同イベントで「ビットコインについて調査したが、特に興味が湧かなかった。ビットコインは、最初に参加した人が最も多くの報酬を得られるシステムで、ねずみ講やマルチ商法のようなものだ」と語っている。Sohmers氏は、マイニングに夢中になっていたパートナーの一人を説得し、マイニングを止めさせたという。
同氏は、「世界中で使われているコンピューティング処理のうち、最も大きな無駄がマイニングだ。ただし、Butterfly Labsが開発したASICなど、マイニング専用のASICは、既にあちこちで開発されている」と述べた。
ビットコインは、違法薬物サイト「Silk Road」の取引や非合法の投機に利用されていた。だが、米国のネット通販大手のTigerDirectがビットコインの導入を発表したように、合法的な事業を手掛ける企業の間でも使用が広まっていることも事実である。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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