EETJ キーサイトとしての研究開発の投資先はどの辺りになりますか。
梅島氏 詳細は決まっていないが、投資先としては、計測機器のキーデバイス開発や、これまで手掛けてこなかった新しい領域の製品開発などが対象になるだろう。2013年秋に会社分割が決定し、1年も経過していないが、その兆候は2014年前半に発表した製品にも見て取れる。
新たな領域の製品では、ハンドヘルド型赤外線サーモグラフィ「Agilent U5855A」(関連記事:ハンドヘルド型測定器事業を強化、サーモグラフィで日本アビオニクスと協業)などがあり、近年強化してきたモジュラー製品もラインアップを一層、広げててきた。
キーデバイス開発でも、最大8GHz帯域のオシロスコープ「Infiniium(インフィニウム) Sシリーズ」に搭載した10ビット分解能のA-DコンバータICがその好例だ。このA-Dコンバータは独自に開発したASICであり、高速サンプリングと高分解能を両立したデバイスであり、製品の競争力に直結しているデバイスだ。今後、こういった優れたASICをより多く開発できると思う。これから1年後に紹介する開発ロードマップには、たくさんの画期的な技術を搭載した製品の開発計画が盛り込まれているようになっているだろう。
EETJ 会社分割、独立に伴い課題はありますか?
梅島氏 まず、社名が変わることで、顧客や取引先の皆さんに、業者登録名の変更など、いろいろなご面倒をお掛けすることになっている。おわびするとともに、できる限りの対応をしていきたい。
そうした部分を除けば、社名変更に伴うブランド力低下が唯一の課題ともいえ、ブランディングを強化していきたい。ただ、HPからアジレントへの移行時のことを思えば、早期にキーサイトのブランドを確立できると思っている。60年以上名乗り続け、広く世間にも浸透したHPからアジレントとして認知してもらうことはとても難しかった。その時の経験も生かし、キーサイトのブランドを確立していく。
EETJ 最後にキーサイト日本法人としての事業目標について教えてください。
梅島氏 日本の産業構造自体が変化してきている。民生機器産業中心の構造ではなくなり、さまざまな産業で成り立つ構造になり、新たな成長産業が登場してきている。われわれもそうした成長産業への注力を、キーサイトとして独立したことを契機により強化したい。具体的には新エネルギー産業、自動車産業だ。日本法人に限らず、全社的にもこうした産業分野に着目し、分野ごとのニーズに応じた製品開発プロジェクトも複数発足している。日本法人としてもそうした全社プロジェクトに積極的に参画しながら、成長分野での事業を広げていきたい。
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