スマートフォン市場の成長が鈍化していることも、TSMCにとって懸念材料となっている。同市場は、TSMCの売上高を支える柱となっているからだ。
HSBC(香港上海銀行)のアナリストであるStephen Pelayo氏によると、TSMCの上位7顧客*)からの売上高は、2012年から2014年にかけて毎年27〜32%増加し、TSMCの売上高全体の38〜44%を占めたという。2012〜2014年はTSMCが「スマートフォンの波に乗っていた」時期であり、世界市場も毎年30〜45%成長していた。
*)Qualcomm、Apple、Broadcom、MediaTek、NVIDIA、Altera、Xilinx
Pelayo氏は、これら7顧客の2015年における売上高成長率は、「ほぼ横ばい」になると分析している。
懸念材料は他にもある。TSMCの競合が、これまで5年近く敬遠していた28nmプロセスでの製造に挑戦し始めているのだ。
BNP ParibasのNg氏は「28nmプロセスにおいて、UMC、GLOBALFOUNDRIES、SMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)の脅威がより明白になっている」と述べる。BernsteinのシニアアナリストであるMark Li氏によると、UMCは28nmプロセスでの生産能力を増強する計画だという。
Li氏は「特に2015年第2四半期に需要が鈍化することから、TSMCは28nmでのシェアを失い、価格圧力に直面すると予測している」と述べた。
TSMCはこれまで幾度となく、2016年に14nm/16nmプロセスの市場で圧倒的なシェアを獲得する見込みだと発言している。TSMCは、16nm FinFET向けにファンアウト型パッケージを開発していて、これがシェア獲得の自信につながっているとみられている。
Fubon SecuritiesのアナリストCarlos Peng氏によると、Apple、Qualcomm、MediaTekは、TSMCのファンアウト型パッケージをサポートするチームを立ち上げたという。
Peng氏は、「TSMCは、2016年後半に同社初となるファンアウト型パッケージ品をハイエンド市場向けに投入すると、われわれは見込んでいる。これにより、関連のサプライチェーンの成長が促進されると見られる。Apple、Qualcomm、MediaTekの3社は、主要顧客となるだろう。TSMCの集積ファンアウト型パッケージ(InFO)は、2016年第3四半期以降、同社の大きな収入源になる他、その後の成長の新たな原動力となるだろう」と述べている。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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