情報通信研究機構(NICT)と富士ロジテックは、物流倉庫に超広帯域無線(UWB:Ultra Wide Band)測位システムを導入し、作業効率を大幅に高めるための実証実験を共同で行った。ピッキングカートの動線を可視化し、カートの経路を最適化することで作業効率を大幅に改善することを可能とした。
情報通信研究機構(NICT)と富士ロジテックは2015年8月、物流倉庫に超広帯域無線(UWB:Ultra Wide Band)測位システムを導入し、作業効率を大幅に高めるための実証実験を共同で行ったことを発表した。ピッキングカートの動線を可視化し、ピッキング経路を最適化することで、作業効率を大幅に改善することができた。
NICTと富士ロジテックは、2015年3〜7月に操業中の物流倉庫においてピッキングカートの全稼働時間、全台数を対象にした動線取得実証実験を行った。具体的には、富士ロジテックの物流倉庫内に、測位誤差が最大50cmというNICTが開発した精度の高いUWB屋内測位システムを配置し、倉庫内にある16台全ての作業用ピッキングカートの上部にUWB移動機を取り付けた。
倉庫内は、作業用ピッキングカートに取り付けられた移動機がどの場所に移動しても、壁などに設置された3つ以上の固定器から信号が届くようにシステム設計されている。実験では固定器に送られた作業用ピッキングカートの動線データを取得し、その動きを可視化した。なお、効率を高めるため、富士ロジテックは実験を行う前にピッキング担当エリアを区切ったり、商品配置を見直したりする対策を施した。
商品配置の見直しなどの対策を施す前と、対策実施後における動線及びカートデータを取得して解析/比較したところ、商品ピッキング歩行時間は平均で50%削減できることが分かった。さらに、商品1個当たりのピッキング時間は、従来の平均8.5秒から6.5秒へと2秒も短縮できたという。ピッキングカートの全稼働時間全台数の動線データを解析し、ピッキング通路の混雑等の状況などを可視化することで、商品棚の配置検討にも役立つとみられる。
今回の実証実験では、手押しのピッキングカートを用いて全台数全稼働時間の動線データを取得した。物流倉庫によっては複数台のフォークリフトを導入して作業を行っている現場もある。今後は手押しのピッキングカートより移動速度が速い作業車を導入している環境においても、UWB測位システムの有用性について実証実験を重ねていく予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.