さて、話を戻しますが、小田急電鉄の午前7時台の上り方向の通勤ラッシュの車内は「この世の地獄の1つ」とも言うべきものです。運行も2分に1本が走る“超過密ダイヤ”となっています。
しかも、電車には「閉塞(へいそく)区間」を設けるという、安全に関するもう1つのシステム上の考え方があります。これは、線路を一定区間(閉塞区間)に区切り、1つの閉塞区間には同時に2つ以上の電車が入れないようにすることです。電車の特性上、前方に別の車両を目視で確認してからブレーキ操作をしていては衝突を防ぐことができないからです。
では、午前7時台の上り方向の通勤ラッシュの閉塞区間がどういう状況になっているかといえば、当然ギッチギチです。
つまり、前の閉塞区間から電車が出ていかないと、次の電車はその区間に入ることができないのです(以前に行った、人身事故シミュレーションも、この閉塞区間の影響が反映されています)。
これが、12月1日に、たった5分の電車の遅発が、結果として4時間にもわたるダイヤ乱れ最大75分(90分ともいわれている)を発生させた原因です。
つまり、12月1日の小田急の大規模なダイヤ遅延の理由は、「ケンカ」ではなく、「列車非常停止ボタン」の押下だったのです。その男性が「列車非常停止ボタン」と「インターフォン」と区別できていれば、こんなニュースにもならない事件だったのです。
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