東京農工大学とロームは、円偏波変換板と独自材料の平面レンズからなる光学素子を共鳴トンネルダイオードに搭載し、指向性が鋭いテラヘルツ(THz)円偏波を発生させることに成功した。0.3THz帯を利用する6G(第6世代移動通信)やセンサー機器などへの応用が期待される。
東京農工大学とロームは2024年8月、円偏波変換板と独自材料の平面レンズからなる光学素子を共鳴トンネルダイオードに搭載し、指向性が鋭いテラヘルツ(THz)円偏波を発生させることに成功したと発表した。0.3THz帯を利用する6G(第6世代移動通信)やセンサー機器などへの応用が期待される。
THz波帯の電磁波は、6Gなどでの利用が検討されている。こうした中で、THz発振器に光学素子を集積化しようとすれば、搭載するレンズの厚みを薄くして平面構造にする必要があるという。
光学素子は、ローム製の共鳴トンネルダイオードから放射された放射状のTHz電磁波を、平面レンズで鋭い指向性の平面波に変換する。そして、円偏波変換板で平面波を円偏波に変換している。メタサーフェスで作製した平面レンズは、誘電体シートの表面と裏面に、THz電磁波の波長に比べ、大きさが数分の一程度と小さい「メタアトム」と呼ぶ構造体を配置。メタアトムのパラメーターを変えれば、屈折率や反射率、透過率といった光学特性を調整できるという。
研究グループは今回、THz電磁波が伝搬する時に減衰しにくい材料である「シクロオレフィンポリマー」を用いた。この表面と裏面に銅のワイヤーを配置し、平面レンズと円偏波変換板からなる光学素子を作製した。この光学素子を共鳴トンネルダイオードに搭載し、鋭い指向性の円偏波が発生することをショットキーバリアダイオードで確認した。
共鳴トンネルダイオード単体からは、y軸方向のみの電界を有するTHz電磁波が放射されている。このため、実験ではx軸方向の電界は観測されなかった。これに対し、平面レンズと円偏波変換板で構成した光学素子を共鳴トンネルダイオードに搭載したところ、電磁波の電界の向きが変換され、x軸方向とy軸方向の両方に電界が振動する円偏波が発生していることを確認した。
今回の研究成果は、東京農工大学大学院工学研究院先端電気電子部門の鈴木健仁准教授と遠藤孝太氏(当時は修士課程)、春石誉人氏(当時は学士課程)、浦島康平氏(当時は修士課程)、山森駿司氏(当時は修士課程)および、ロームによるものである。
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