対象として名前が挙がったのは、SSDやフラッシュメモリ用コントローラICを手掛けるAnobit Technologiesである。同社は、フラッシュの微細化に伴って顕在化している、書き換え可能回数の低下に対応する独自のメモリコントロール技術を保有する企業だ。
イスラエルで発行されているヘブライ語の新聞「Calcalist」が報じたところによると、Appleは、SSD(Solid State Drive)やフラッシュメモリ用コントローラを手掛けるイスラエルの新興企業であるAnobit Technologiesに対し、同社を4億〜5億米ドルで買収する交渉を進めているという。
Anobitは2006年に創設され、SSD(Solid State Drive)を手掛けてきた。NAND型フラッシュメモリのエンデュランス特性(データ書き換え可能回数)を高める独自の技術MSP(Memory Signal Processing)を保有する。エラー訂正とメモリ管理スキームを組み合わせることでエンデュランス特性の限界を高める技術で、同社はこの技術をフラッシュメモリコントローラICに組み込んで提供中だ。
フラッシュメモリのエンデュランス特性は、製造プロセス技術の微細化に伴って大幅に低下しており、このままでは多くのアプリケーションにおいてフラッシュメモリを使いにくくなってしまうと危惧されている。エンデュランス特性が低ければ、機器設計者はマージンを確保するために余分なメモリを搭載しなければならなくなってしまう。
Anobitは、2011年の初頭にHynix Semiconductorと協業し、NANDフラッシュメモリコントローラIC「MSP2020」の量産を開始していた。Calcalistのリポートによれば、Anobitの半導体製品は既にAppleの数多くの製品に搭載されており、それらには「iPhone」や「iPad」、「MacBook Air」などがあるという。
このリポートが伝えるところでは、Anobitはアジアのある大手フラッシュメモリメーカーから大規模な投資を打診されており、その検討を進めている。Appleとの交渉により、両社がともにAnobitの戦略的な投資企業になる可能性があるという。
Anobitは、PitangoやBattery Ventures、Intel CapitalといったベンチャーキャピタルやMicron Technologiesから合計で7200万米ドルを超える資金を獲得したとみられており、200人の従業員を抱えている。
Anobitは2011年の8月に、2000万個を超えるフラッシュメモリコントローラを出荷済みで、最大256GバイトのNANDフラッシュをサポートする品種「MSP2025」については、20nmおよび20nmよりも進んだ微細化世代のプロセス技術で製造していると発表していた。
【翻訳、編集:EE Times Japan】
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