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関税措置は吉か凶か、米商務省が中国製ソーラーパネルに最大250%の課税決定ビジネスニュース

中国製ソーラーパネルが不当に安い価格で販売されているとして、米国は、中国製品に対して31〜250%の関税をかけるという決定を下した。しかし、この措置は米国の太陽光発電市場にマイナスの影響を与える可能性もある。

» 2012年06月06日 10時59分 公開
[Georgina Benedetti,Frost & Sullivan]

 ソーラーモジュールの価格は、過去5年間で急激に下がった。これには、いくつかの要因がある。具体的には、景気が低迷し、その結果、太陽エネルギーの需要が減少したことや、ポリシリコンの供給過剰、生産能力の拡大に加え、2011年に中国メーカーの安価な製品が市場に流入し、競争が激化したことなどが挙げられる。

 中国の太陽電池メーカーは、米国企業よりも低コストで太陽電池を製造できる。そうした中国メーカーが米国市場に参入したことによって、米国の太陽電池メーカーは製品価格やマージンの引き下げを余儀なくされ、生産拠点の一部を閉鎖したり、破産に追い込まれたりするケースもあった。例えば、2011年8月にはSolyndraが経営破綻している(関連ニュース)。

 こうした背景の下、SolarWorldをはじめとする米国の結晶シリコン太陽電池メーカー7社は、中国の太陽電池メーカーに対して、米国に輸出する製品の価格に関する説明責任と国際商取引法の順守を求めることを目的とした業界団体「Coalition for American Solar Manufacturing(CASM:米国太陽電池メーカー連合)」を結成した。CASMは、中国製の太陽電池が不当に廉価で販売されているとして、中国製の太陽電池に反ダンピング/相殺関税を課するよう求める訴えを起こした。

 これを受け、米商務省は2012年5月24日、中国製のソーラーパネルに対して31〜250%の高率関税を課す決定を下した。しかし、中国製のソーラーパネルに高額の輸入税をかけることは、米国内の太陽電池産業にマイナスの影響を及ぼす恐れもある。

 米国政府は、「Energy Policy Act of 2005(2005年エネルギー政策法)」の成立以降、太陽エネルギーシステムの導入の促進と、設置コストと発電コストの引き下げを目指し、太陽電池メーカーに対して税制上の優遇措置と融資保証を実施してきた。

 政府が奨励策を実施し、再生エネルギー基準を設定したことで、米国では太陽光発電装置の設置と価格の引き下げが大きく進展した。

 さらに、中国メーカーから、より安価なソーラーモジュールが輸入され、価格の低下が進んだことで、米国では太陽光発電装置を設置しやすくなり、他の発電方式との競争力が増した。米国における2011年のソーラーモジュールの平均販売価格は、2010年と比べて28.1%低下している。

 しかし米国では、太陽光発電などの再生可能エネルギープロジェクトに対して投資税額控除を認める「米国再生・再投資法1603条」が2011年12月に失効している。さらに、米商務省が今回の決定を下したことで、米国の太陽光発電コストが上昇して、ソーラーパネルの需要が鈍化し、ひいては米国内の雇用にも影響を及ぼすのではないかと懸念されている。ソーラーパネルの需要が下がると、太陽電池産業におけるポリシリコンの供給過剰も深刻化すると予想される。米国の太陽光発電は、化石エネルギーや原子力エネルギーといった従来型エネルギーや、太陽光発電以外の再生エネルギーに対する競争力を失ってしまう恐れがある。さらに、中国が、米国のソーラーパネルメーカーに対して報復措置を取ることも考えられる。

 中国からの安い輸入パネルを利用して手頃な価格の太陽光エネルギーを推進する業界団体「Coalition for Affordable Solar Energy(CASE)」は、こうした予想を支持している。CASEを率いる米国の太陽光発電大手であるSun Edisonは、中国製のソーラーパネルに50%の関税をかけると、米国内で1万4000人の雇用が失われることになると予測している。

 新しい関税措置が、太陽光発電市場にどのような影響を与えるのかを正確に予測することは、現時点では難しい。しかし、市場調査会社であるFrost & Sullivanは、「(関税措置は)2012年の太陽光発電市場の減速を招く」と予想している。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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