3番目の用途は、センサー用の電源だ。電力系統監視や防災監視システムに取り組む近計システムによれば、系統電力が手に入らない地点で長時間センサーを動作させるニーズに小型軽量の燃料電池が適しているという。「当社は京都大学と組んで、森林や山岳などに設置する地震計などの各種センサーを開発している。このような用途では約6カ月の動作が求められる。従来は鉛蓄電池(12V、40Ah)を使っていたが、13kgという重量が設置作業のネックとなっていた。水素燃料電池であれば、400Wh品で3kgに軽量化でき、作業者の負担を大幅に軽減できる(図8、図9)」(近計システム 執行役員の高畠一徳氏)*7)。
*7) 今回の燃料電池が自分自身の動作のために電力を使わない設計となっていることも役立つという。「この種のセンサーはGPSなどの通信機能を起動するときのみ電力を大量に必要とし、それ以外のときはほとんど使わない。もしもバルブのような機構を組み込んでいたら、利用可能な期間が大幅に短くなっていただろう」(高畠氏)。
図8 長期間の利用に向く「long life Aqua」(仮称) 図左から地震計、long life Aqua、従来の鉛蓄電池。燃料電池の本体重量は3kg、カートリッジ重量は900g。出力3W、電圧12V。容量は400Wh。
図9 地震観測網の整備に役立つ燃料電池 図右上の地図にあるような密な観測網を作り上げようとすると、電源が確保できない山岳地帯などにセンサーを設置する必要がある。その際、長寿命で軽量な電池が必要になる。実用化ではこの用途が最も早く、2012年秋からは大学向けに試験的に製品の供給を開始、2013年4月には製品化を予定する。4番目の用途は、PCなどの電源として用いるというものだ。15W品を企画しているという。
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