TSMCが28nmプロセスを適用したチップの製造に苦戦していることから、他のファウンドリにも製造を委託する半導体メーカーが増えている。
STMicroelectronics(以下、ST)は、Samsung Electronicsと、32nm/28nm世代の高誘電率膜/金属ゲート(HKMG:High-k/Metal Gate)プロセス技術を適用した半導体のファウンドリ契約を締結した。
今回の契約によって、STはSamsungから28nmプロセスのチップの提供を受けることになる。STはこれまで、TSMCとファウンダリ契約を結んでいた。TSMCは最先端の半導体サプライヤとして、数々の半導体メーカーのファウンドリ製造を請け負ってきた。しかし、2012年に入ってからは、28nm世代のCMOSプロセス技術を適用した半導体を満足に供給できない状態に陥っており、同社の顧客企業の多くが、他のファウンドリに製造委託する計画を発表していた。
STは、自身も最先端の半導体メーカーである。同社は、28nm/20nm世代の半導体の製造に、完全空乏型SOI(FD-SOI:Fully Depeleted Silicon-on-Insulator)技術を適用することを明らかにしている。しかし、今回のSamsungとの契約が、FD-SOI技術への取り組みの一環であるかどうかは定かではない。
STは当面、Samsungに製造を委託する意向で、既にモバイル機器や民生機器、ネットワーク機器向けに十数種類のSoC(System on Chip)をテープアウトしているという。テープアウトとは設計が完了した段階を指すので、製造を経て販売に至るまでは、あと数カ月を要する。
Samsungのファウンドリ事業部門でエグゼクティブバイスプレジデントを務めるKwang-Hyun Kim氏は、発表資料の中で「当社は既に、ST向けに32nm/28nm世代のSoC製品の製造を開始している。今回STとファウンドリ契約を結んだことは、当社が32nm/28nm世代のHKMGプロセス技術や最先端のプロセス技術を訴求してきた結果の表れである。Samsungは今後も、32nm/28nm世代のプロセス技術の開発に積極的に取り組み、最先端のプロセス技術を適用したソリューションを顧客企業に提供し続けていきたい」と述べている。
STでCTO(最高技術責任者)を務めるJean-Marc Chery氏は、「革新的な新製品を提供していくことに加え、STが市場で成功するためのもう1つの鍵となるのは、業界のリーダー的企業と提携することだ」と述べている。STとSamsungは今回の契約以前から、次世代CMOS技術の研究開発を行うISDA(International Semiconductor Development Alliance)の一員として、プロセス技術の開発に協力して取り組んでいた。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.