big.LITTLE処理の開発に当たっては、まず既存のモバイル機器におけるプロセッサの処理負荷についての分析が行われた。その結果は、大まかに言えば「処理負荷の大半は、比較的性能が低く、低消費電力のコアでも対応可能なものである。残りのわずかな処理は、高性能だが消費電力の多いコアを必要とする」というものだった。それを踏まえ、big.LITTLE処理は、どのジョブをどのコアで実行するかを自動的に振り分けるソフトウェアにより、最小限の消費電力で効率的に処理を実行することを目標として開発された。
現在、ARMのソフトウェア開発部門は、同社プロセッサ向けのLinux関連ソフトウェアを開発する非営利組織Linaroとともに、big.LITTLE処理の2つのモードの開発に取り組んでいる。
1つはbig.LITTLE Task Migrationモードである。これは、クラスタ構成のコア間でジョブを移行するというものだ。これについては既にソフトウェア開発は完了しており、2013年6月までに実利用が始まる予定である。もう1つのbig.LITTLE MPモードでは、個々のスレッドを最適なコアに割り当てることにより、性能を高めることが可能になる。ただし、こちらはまだ開発の初期段階にあるため、さらなる最適化が必要だという。
Jeff氏によると、Cortex-A15は「Cortex-A9」の約2倍の性能、Cortex-A7はCortex-A9とほぼ同等の性能を実現できる見込みだという。なお、今回のテストチップは、40nmプロセス技術により、2個のCortex-A15、3個のCortex-A7、メモリーコントローラのDMC-400を集積しており、キャッシュコヒーレント(キャッシュ上のデータの一貫性が保証されている)なインターコネクトが実現されている。
「Microprocessor Report」の編集者であるKevin Krewell氏は、「2011年にbig.LITTLE MPモードの構想を聞いたときは、非常に高度な技術になるのではないかと思った。だが、開発の進捗状況はかなり順調なようだ。この技術も、今後、業界にとって不可欠なものとなるだろう。Intelも、同社の『Atom』や『Core』、『Xeon』などのコアを用いて、同様の処理を実現する可能性がある」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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