Appleは、LTE/3G/2G対応のモデム技術を手に入れるために、ST-Ericssonとルネサス モバイルのうちいずれかを買収しようと考えている可能性がある。モバイル機器市場のライバルであるSamsungに対抗するために、LTE/3G/2G対応のモデム技術をぜひとも自社で保有しておきたいからだ。
「Appleは、LTE/3G/2G対応のモデム技術を手に入れるために、スイスST-Ericssonとルネサス モバイルのうちいずれかを買収しようと考えている可能性がある」――。米国の市場調査会社であるForward Conceptsで社長兼主席アナリストを務めるWill Strauss氏は、このような見解を示している。
ST-Ericssonとルネサス モバイルは、いずれも事業に行き詰まっている。また、それぞれの親会社であるSTMicroelectronicsとルネサス エレクトロニクスも、半導体事業を立て直すための抜本的な改革を迫られている。ST-Ericssonとルネサス モバイルは、いずれも優れたモデム技術を有しているが、デザインウィンを十分に獲得できていないことから、それらの技術の価値を生かすことができていない。
Strauss氏はニュースレターの中で、「LTE/3G対応端末をめぐるSamsung Electronicsの動向は、Appleにとって悩みの種になっているだろう」と述べている。
Samsungのスマートフォン「GALAXY S III」には、LTE/3G/2Gに対応したモデムIC(ベースバンドチップ)「CMC221S」が使われている。Strauss氏は、「GALAXY S IIIは、何らかのネットワーク向けに、中国Via Telecom製のCDMA対応モデムICも搭載している」とみている。一方で同氏は、「SamsungのモデムICは、2013年後半もしくは2014年初めに、アプリケーションプロセッサである『Exynos』と統合される」とも予想している(「GALAXY S III」の分解記事はこちら)。
Samsungと同様に、AppleもARMアーキテクチャをベースとして「Apple A5」、「同A6」、「同A6X」といった独自のアプリケーションプロセッサを開発している。ただ同社はファブレス企業であり、これらのプロセッサの製造はSamsungに委託している。また、Strauss氏は、Appleは自社でモデムICを開発する能力もないとみている。Appleは、かつてInfineon Technologies製の3GモデムICを採用していた。その後、Intel製のモデムICを使用するようになり、最近ではQualcomm製のモデムICを導入している。
複数のLSIの機能を1つのLSIに統合するSamsungの技術は、Appleにとって大きな圧力になるであろう。将来的には、AppleがLTEモデム技術のライセンス供与を受け、それをシステムチップに取り入れる可能性もある。しかし、必ずしもそのモデム技術が最良のものであるとは限らない。もしApple自身がモデム技術を有していれば、統合に関する課題の解決はより容易になるだろう。
Strauss氏はニュースレターの中で、「Appleが、Samsungのような最先端のモデムを設計できる機会はほとんどない。多大な労力を費やしてモデムを自社開発する可能性を探るか、ST-Ericssonまたはルネサス モバイルのLTE/3G/2Gモデム技術に目を向けるか、Appleはいずれかの策を講じなければならないだろう」と述べている。
さらにStrauss氏は、「AppleがTD(Time Division)-LTEのみに対応するモデム技術を持っている企業を買収することも、可能性としてはあり得る。しかし、それでは部分的な解決にしかならない。FD(Frequency Division)-LTEや、3G、2Gにも対応するために、さらなる取り組みが必要になるからだ」と述べた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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