Canatuの透明導電膜フィルムは、カーボンナノ素材と新たな製造プロセスを用いて生産する。従来のITO(酸化インジウムスズ)透明導電膜フィルムをベースとしたタッチセンサー製品に比べて、外光の反射を1/3に抑え、コントラストは33%も向上する。さらに高い透過率を実現しつつ、3D形状の加工も可能とする柔軟性など、さまざまな特長を備えている。
フィンランドのCanatuは2013年10月23日、タッチセンサー向けの透明導電膜フィルムを発表した。同社の透明導電膜フィルムは、カーボンナノ素材と新たな製造プロセスを用いて生産する。従来のITO(酸化インジウムスズ)透明導電膜フィルムをベースとしたタッチセンサー製品に比べて、外光の反射を1/3に抑え、コントラストは33%も向上する。さらに高い透過率を実現しつつ、3D形状の加工も可能とする柔軟性など、さまざまな特長を備えている。スマートフォンやタブレット端末、車載電子機器、家電機器などのタッチセンサー用途に向ける。
同社は、今後の生産/供給体制についても明らかにした。新製品の事業化に合わせて2013年10月より小規模量産を立ち上げた。2014年4月以降には本格量産工場を稼働させる予定だ。さらに、2015年以降は日本企業を含めアジア企業と製造合弁会社を設立し、透明導電膜フィルムの量産を検討している。
同社が開発した透明導電膜フィルムは、フラーレン(C60)とカーボンナノチューブ(CNT)を組み合わせた「Carbon NanoBud(CNB)」と呼ぶ素材を用い、ロールツーロール方式でシート状の基板上に直接、エアロゾルプリンティングを施す「Direct Dry Printing」と呼ぶプロセスで製造する。
Canatu のCEOを務めるRisto Vuohelainen氏は、「これまで一般的に用いられてきたITO膜ベースの製品に比べて、CNB透明導電膜フィルムは、外光の反射やヘイズがほとんどなく、コントラストを高めることができる。これをディスプレイに採用するとバックライトの消費電力が削減でき、電池の使用時間を15〜25%伸ばすことができる」と話す。実際、CNB透明導電膜フィルムの透過率は、シート抵抗が150Ω/平方の場合で96%と高い。ヘイズはわずか0.15%である。反射率は0.2%を実現した。ちなみに、ITO膜ベースの製品は平均的な反射率が4.6%だという。
柔軟性もCNB透明導電膜フィルムの特長だ。Canatu のマーケティング&セールス担当のバイスプレジデントを務めるErkki Soininen氏は、「曲げ半径は1mmと柔軟で、形状も元サイズの2倍まで伸張する。2mmの曲げ半径で3万回の折り曲げテストを行っても、シート抵抗の変化率は1%未満で、性能はほとんど低下しない」と述べた。このような柔軟性から、3D形状のタッチセンサーなども容易に製造することができる。
Risto Vuohelainen氏は、今後の事業展開についても語った。「CNB透明導電膜フィルムは、現行のITO透明導電膜製品を代替する素材になりうる製品で、折り曲げ可能な透明導電膜フィルム市場でトップシェアを狙う」計画だ。このために必要となる製造/供給体制も強化していく。まず、少量生産を行うパイロットラインをフィンランド・ヘルシンキの自社工場で立ち上げ、2013年10月より生産を始めた。本格的な量産工場は2014年4月以降に開設する。量産工場はフィンランドあるいはアジア地域に建設する予定だ。これとは別に次のステップとして、「日本企業を含め、アジアの企業と合弁で製造拠点を設けることも検討していく。そして2015〜2016年には生産を開始したい」と話す。
同社では、評価用のサンプル品や少量生産についてはタッチセンサーまで生産して供給するが、基本的にはCNB透明導電膜フィルムを量産し供給する。このため、CNB透明導電膜フィルムを使ってタッチセンサーを製造するために必要なパターンニングなど、後工程の製造ノウハウなどは、ライセンスを希望する企業に対して技術を供与していく計画だ。なお、タッチセンサーを駆動するためのコントロールICは、現行のITO膜ベースのタッチセンサー向け製品を一部変更することで対応できるという。
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