有機光エレクトロニクスセンサーを手掛けるフランス企業と、ディスプレイ開発を手掛ける英国企業が共同で、フレキシブルな有機イメージセンサーを開発すると発表した。同イメージセンサーは、医療機器から指紋認証まで、さまざまな用途に適用できるとしている。
有機光エレクトロニクスセンサーの印刷技術を持つフランスのIsorgは、ディスプレイ開発メーカーである英国のPlastic Logicとの間でパートナーシップを構築し、プラスチック基板に搭載したフレキシブル有機イメージセンサーの開発を手掛けていくと発表した。
Isorgは、2010年にCEA-Leti(フランス原子力庁電子・情報技術研究所)からスピンオフして設立された新興企業である。存在検知やジェスチャー認識などの用途向けに、単一素子または数種類の素子による有機センサーの開発を手掛けている。一方、Plastic Logicは、画素数が最大で数百万に上るフレキシブルディスプレイに向けた、アクティブマトリクス式有機バックプレーンの分野で優れた実績を持つ。このためIsorgとPlastic Logicは、フレキシブル型イメージセンサーを開発する上で、互いを補完する実績と技術を備えているといえる。
フレキシブルなアクティブマトリクス式有機ELディスプレイ(AMOLED)は近年、最新型の携帯電話機などのように曲面を持つ電子機器において、重要な技術として関心を集めている。それに伴い、同一の基板上にイメージセンサーを作り込む技術への注目も高まっている。
両社は、フレキシブルイメージセンサーの共同開発にあたり、Isorgが開発した技術をベースとして採用している。プラスチック基板上に形成した有機薄膜トランジスタバックプレーンに、有機光検出器を印刷するというものである。最初に完成した試作品は、アクティブ領域が4×4cmで画素数94×95、画素幅は175×200μm、画素ピッチは375μmだという。
Isorgが通常、有機光検出器で使用する材料は、PEDOT-PSS*1)である。この材料を使うと、低コストのプラスチック基板またはガラス基板上に、常温常圧で形成することができるので、高コストとなる高温かつ真空状態での処理が必要ない。
*1)PEDOT-PSS:水分散ポリチオフェン誘導体。ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸ナトリウムの混合物である。
Plastic Logicは、バックプレーン設計や製造プロセス、材料などを、Isorgの有機光検出器に合わせて最適化したという。こうして実現したフレキシブルな透過型バックプレーンは、デジタルイメージセンシング技術をベースとした幅広い用途への適用が期待されている。
Isorgによると、適用が見込まれる分野としては、スマートパッケージングや、医療機器向けセンサー、生物医学診断、指紋のスキャニングによるユーザー認証などが挙げられるという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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