三菱電機は、新開発のEV駆動用フルSiC(炭化ケイ素)インバータとモータを一体化した小型の「EV用モータドライブシステム」を開発した。モータドライブシステムの小型化を実現したことで、バッテリの設置空間や乗員の居住空間をより広く確保することが可能となる。
三菱電機は2014年2月、新開発のEV駆動用フルSiC(炭化ケイ素)インバータとモータを一体化することで、小型化を実現した「EV用モータドライブシステム」を開発したと発表した。モータドライブシステムの小型化により、バッテリの設置空間や乗員の居住空間をより広く確保することが可能となる。同社は2018年度を目標に、開発したモータドライブシステムの事業化を目指す計画である。
SiCをベースとしてトランジスタやダイオードは、一般的なシリコンベースの半導体チップに比べて、高耐圧で導通損失が小さいのが特長である。このため、パワー半導体/パワーモジュールなどへの適用が進んでいる。ただ、ウエハーの結晶品質などの問題から、ダイオードのSiC化が先行し、トランジスタのSiC化はやや遅れていた。
三菱電機は2013年12月に、トランジスタとダイオードの両方をSiC化したフルSiCのパワーモジュールを開発し、これを搭載した鉄道車両用インバータ装置を発表するなど、SiCパワー半導体チップの製品化で先行している。今回のEV用モータドライブシステムでも、円筒状にパワーモジュールを配置したフルSiCインバータを新たに開発して内蔵した。さらに、モータについても、巻線と冷却器との間の熱抵抗を低減することで小型化している。その上でモータとインバータを一体化した。容量は60kW出力タイプでわずか14.1Lと小さく、従来のモータ単体とほぼ同じ大きさという。
モータとインバータを一体化するとともに、それぞれ対応していた冷却器も一体化している。筐体外周に、モータ冷却用の水路とインバータ冷却用の水路を並列に配置した構造となっている。冷却性能も向上しており、出力が低いポンプでも従来と同等の冷却性能が得られるという。
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