情報通信研究機構は、UWB(Ultra Wide Band)を活用した高精度の屋内測位システムを開発したと発表した。GPSなど衛星測位システムが使用できない屋内でも、リアルタイムに30cm程度の小さな誤差で位置測定が行えるという。
情報通信研究機構(NICT)は2014年5月、UWB(Ultra Wide Band)を活用した高精度の屋内測位システムを開発したと発表した。GPSなど衛星測位システムが使用できない屋内でも、リアルタイムに30cm程度の小さな誤差で位置測定が行えるという。
開発した屋内測位システムは、7.25GHz〜10.25GHzのUWBを利用する。UWBの信号は1ns程度の短いパルス長で、信号パルスの伝播(でんぱん)時間から固定機と移動機との距離を30cm以内の精度で測定できるという。位置を事前に登録した3台の固定機を用いることで3点測位によって移動機の位置を算出する。
NICTは、2012年に同様の屋内測位システムを開発していたが、今回、新たに「UWBの測定距離を増大させる技術」を開発、適用することで、測定距離を従来比3倍以上となる30mにまで増大させることに成功した。測定距離を増大させるため、1台の固定機の中に内蔵する通信モジュール(アンテナを含む)を1個から4個に増やし、時間を少しずつずらして連続して送信する技術を採用。その際、個々のモジュールの送信電力密度を規定値に抑えつつ、時間軸上の合成電力を大きく得るために、個々のモジュール間の送信間隔を繰り返し調整、評価を行っている。さらに、増強した電力を検出できる技術を合わせて開発し、測定距離を延ばすことに成功したという。これにより、UWBの課題である測定距離の短さを補うことに成功し、測距のための固定機の設置台数を減らせることが可能になった。
実用化に不可欠な移動機の小型化も行い、今回、スマートフォンに連結した形状の端末や作業ポケットに入れられる小型端末などを開発している。また開発したシステムは、「エリア内の移動機の位置情報をリアルタイムで測位できるだけでなく、視覚障がい者が歩行する上で主な障害となる段差、階段の有無や道幅などの状況を考慮したルートを算出できるため、目的地までの距離と方向を音声読上げと音声入力によりナビゲーションする、視覚障がい者の歩行支援などへの活用も期待される」(NICT)という。
NICTでは、開発した屋内測位システムの実証実験をショッピングモールや物流倉庫で実施する他、5月28〜30日に東京ビッグサイトで開催される「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2014」でデモを公開する。
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