EETJ 今中期計画では、車載、スマホに続く、事業の柱として「エネルギー・ヘルスケア・インダストリー・IoT(モノのインターネット)」の“EHII事業”を立ち上げるとされています。
気賀氏 EHII事業は、これまでも仕込みを行ってきた事業であり、これからの3年間で、600億円分の売り上げにつながる仕込みを行おうとしている。
エネルギーについては、アルプス・グリーンデバイスの設立時(2010年)から強化を進め、ヘルスケア分野でも、HMI関連製品で実績を着実に伸ばしてきた。インダストリーは、エネルギーに近いがエネルギーマネジメントシステム(EMS)やファクトリーオートメーション分野をターゲットにしている。IoTについては、エネルギー、ヘルスケア、インダストリーにも共通する概念であり、“EHII事業”として強化する。
EETJ 大手メーカーで構成されるスマホ/民生機器市場や自動車市場と異なり、EHIIの各市場は、少量多品種生産を行うメーカーで構成される市場です。これまでとはビジネスの進め方を変えるのですか。
気賀氏 少量多品種に対応できるように、モノづくりや調達などを変えていく必要があるだろう。もちろん、自動機で大量生産する技術を残しつつになるが。
重要なことは、これまでもアルプス電気の強みの1つであったカスタマイズ力を、少量多品種生産の用途で、どのように効率的に提供することができるかだと考えている。100通りのカスタマイズを依頼されても、実際にカスタマイズする種類は50通り、30通りで済むような汎用的な共通基盤、プラットフォームをどのように構築するかが勝負になるだろう。
これまでも、スイッチの大部分の構造は同じだが、小さな変更で、スイッチのフィーリングを顧客ごとにカスタマイズするというプラットフォームが構築できてきた。今後は、ソフトウェアだけでカスタマイズが自由にできる無線モジュールなど強い基盤をそろえていく。
EETJ IoTなどの市場に向け、少量多品種対応以外に、アルプスとしてどのような強みを発揮されていきますか。
気賀氏 IoT市場では、チップや小型モジュールをそのまま使いこなしたいと思う顧客は少なく、ソフトウェアなどを含めたすぐに使えるモジュールとして提供し、クラウドまでのサポートを求めるだろう。その辺りでも、アルプスの強みを発揮したい。
余談だが、昔は、汎用部品だけを提供してビジネスが成り立った。その頃は、顧客が部品の使い方を知っていた。しかし、今は、部品を組み合わせ仕上がった状態で提供して欲しいといわれる。自動車向けにスイッチを提供し始めたが、次第にスイッチ以外の+αを付けた車載モジュールが求められるようになったのがその一例だ。こうした+αを付けて付加価値を提供できる点がアルプス電気のユニークな部分だと自負している。
今、現在も、そこまでは仕上がったものは要らないから部品だけ欲しいという顧客もいるのも事実。しかし、そうした顧客のほとんどは、その部品に価値を見いだしてはおらず、そこに大きな利益は望めない。
EETJ 付加価値を高めた製品作りには、これまで以上に他社との連携が必要になるかと思います。他社との連携強化策はありますか。
気賀氏 コラボレーションは、とにかく人間関係の構築が大切だと考えている。ただ、企業間でコラボレーションを図ることは、世の中のほとんどの企業が考えていることで、われわれ以外の企業もどこかの企業と連携しようとしている。そういった風潮の中でコラボレーションを図っていくことは特段難しいことではないだろう。
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