三菱電機は、InP(インジウムリン)化合物半導体を使った光半導体に強みを持っている。2022年度に行った同社の調査では「送信用EML(Electro-absorption Modulator integrated Laser diode)チップでは、世界シェアの50%を持っていた」という。2024年4月には、光トランシーバーに搭載される送信用の光デバイス「200Gbps(112Gbaud PAM4)EMLチップ」の量産を開始している。
昨今、生成AI(人工知能)の利用拡大に伴い市場が急拡大しているデータセンターでは、光ファイバー通信速度が、従来の400Gbpsから800Gbpsや1.6Tbpsへと移行しつつある。一方で、光トランシーバーは、送信用の光デバイスでは800Gbpsや1.6Tbps対応品が市場に投入されているのに対し、受信用の光デバイスでは性能を満たす製品が少なかった。
山内氏は、三菱電機が今まで受信用の光デバイスを提供してこなかった理由について「現在主流である100Gbps品は、Si(シリコン)系の半導体などでも製造できるため、三菱電機が得意とするInPで市場優位を取ることは難しかった」と述べ、「一方で、200Gbpsでは、InPの物性や当社の製造技術/生産能力が最大限に生かせるため、市場参入を決めた」と説明した。
今後の光デバイスの販売戦略について、同氏は、「光トランシーバーにおいて、送信用光デバイスと受信用光デバイスは対になる存在だ。三菱電機は今後、200Gbpsに対応した送信用/受信用光デバイスをセットで提供することで、光トランシーバーの通信容量拡大およびデータセンター内通信の高速/大容量化に貢献する。将来的には、送信用光デバイスと同じく50%以上のシェアを狙っていく」と語った。
データセンター向け光トランシーバーに搭載する受信用光デバイスの今後のトレンドについて、同氏は「2025年までは、現状の100Gbps品を8つ組み合わせて800Gbpsを実現する方法が続く。2025年〜2026年にかけて、200Gbpsを4つ組み合わせて800Gbps、あるいは、8つ組み合わせて1.6Tbpsを実現する方法に移行していくだろう」と説明し、「(光デバイスの)業界では、1チップで400Gbpsの実現を目指す流れがある。三菱電機は、400Gbps実現に向けた道筋が既に見えていて、2027年頃までに実現できる見込みだ」と述べた。
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