実用化に向けて確実に研究が進んでいる色素増感太陽電池。今回、スイスの大学の研究グループは、高価なルテニウムの代わりに埋蔵量が豊富で安価な亜鉛を用いた色素増感太陽電池について、新たな開発手法を発表した。低コストの太陽電池の実用化を加速するとして期待されている。
スイスのUniversity of Baselの研究グループは、持続可能かつ再生可能な太陽電池を実現可能な新しい手法を開発したと発表した。英国の科学雑誌「Chemical Communications」に掲載された記事によると、この新手法は、埋蔵量が豊富な金属を用いた低コストの太陽電池の実現に向けて道を開くことになるという。
色素増感太陽電池(DSC)は、色素を吸着したTiO2(二酸化チタン)半導体を使用する。この色素は、太陽光を吸収して、半導体に電子を注入する。研究グループの化学者によると、これは光電流を発生させる上で重要な事象だという。
研究グループは、今回の飛躍的な成果として、2つの点を挙げている。1つ目は、色素を合成し、さらにその色素をTiO2微粒子の表面に吸着するための独自の手法を開発したことだ。2つ目は、入手が容易な金属であるZn(亜鉛)を用いた単純化合物を使用できるということを実証した点である。同グループは、色素の合成と半導体の表面への吸着を同時に行う手法を開発したことが重要な成果だとしている。
研究グループによると、色素増感太陽電池で使用するRu(ルテニウム)色素は、極めて希少な上にコストも高い。そこで、埋蔵量が豊富で比較的コストも低い銅を利用できることに加え、より安価なZn化合物を用いることで材料の持続可能性を高められることも実証した。
University of Baselの教授であるEd Constable氏は、発表資料の中で、「われわれは、太陽電池と照明器具とをインテリジェントに連携させることで、“日中は太陽エネルギーを蓄積し、夜間には照明器具に利用する”という夢に向かって取り組んできた。今回の発明は、この夢を実現する上で重要な一歩となる。欧州研究会議(ERC)の研究プログラム『Light-In, Light-Out』の核心に迫る成果だ」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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