スマートフォンやタブレット端末の内部で無線通信やオーディオ、ビデオの処理を担うDSPコアで高い市場シェアを握るIPコアベンダーのCEVA。人員規模は世界で190名、売上高は6000万米ドル強だが、「1000億円あっても当社を買収することはできない」と主張する。
DSPのIPコアベンダーであるCEVA(シーバ)は、2012年5月24日に東京都内で報道機関向けの説明会を開催し、事業の状況と最新の製品群を紹介した。同社は、無線通信のベースバンド処理と、オーディオ処理、ビデオ処理という3つのアプリケーション領域に注力してDSPコアを供給しており、市場調査会社である米国のThe Linley Groupが5月14日に発表した報告によれば、2011年の世界におけるDSPコアIP市場におけるCEVAのシェアは実に90%に達する。
事業の状況については、最新の会計年度の売上高が6020万米ドル、顧客数が200社、年間出荷数量が10億個で、2009年度の4040万米ドル、150社、3億700万個からいずれも大幅に拡大していると説明した。特に携帯電話機向けで、Samsung Electronicsや、Infineon Technologiesから無線通信チップ事業を買収したIntelなど、ベースバンドプロセッサの大手ベンダーが軒並みCEVAを採用したことが成長を大きく後押しした。「今や、世界の携帯電話機の3台に1台は、当社のDSPコアを搭載している」(日本シーバの代表取締役社長を務める日比野一敬氏)という。
さらに、内部留保額についても1億6300万米ドルと高く、2009年度の8500万米ドルから2倍近くに拡大しているなど、強固な財務経営基盤を築いていると説明。それによって、顧客に対しても継続的な製品供給を約束できるとし、「CEVAは、従業員数で見れば世界でわずか190名の規模だが、1000億円あっても買収できないほどの企業だ」(同氏)と主張した。
最新の製品群については、2012年になって投入した3つのDSPコアファミリを紹介した。(1)オーディオ/音声用と、(2)画像認識/画像処理用、(3)通信用である。
(1)オーディオ/音声用DSPコアの「CEVA-TeakLite-4」は、半導体チップに集積した際にコストに跳ね返る実装面積を最小化できるように最適化しており、回路規模は10万ゲートを下回る。「性能についても妥協していない。32ビットと16ビットの積和演算器(MAC)を最大でそれぞれ4つずつ搭載でき、28nm世代の半導体プロセス技術を適用すれば、パイプライン数が10段の場合に動作周波数は最低でも1.5GHzを確保できる」(CEVAでVice President of Corporate Marketingを務めるEran Briman氏)。スマートフォンの通話音声と音楽再生の品質を高めることが可能だという。
(2)画像認識/画像処理用DSPコアの「CEVA-MM3101」は、スマートフォンやタブレット端末、テレビ受像機などに搭載する画像認識アプリケーションを想定して開発した。28nm技術で製造すれば、実装面積はメモリを含めても最小で1mm2に収まるという。さらに、「マイクロプロセッサを使う場合に比べて、画像認識処理の消費電力を1/10〜1/20に低減できる」(同氏)という特徴もある。
(3)通信用DSPコアの「CEVA-XC4000」は、汎用性の高いアーキテクチャを採用しており、「3GからLTE、LTE-Advancedまで対応する、完全なソフトウェア無線(SDR)を実現可能だ」(同氏)と主張する。さらに、高速無線LAN「IEEE 802.11ac」やホワイトスペース通信の「IEEE 802.22」といった、次世代規格への拡張性も備えているという。
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