通信機器向けモデム機能を備えた半導体製品(いわゆる通信プラットフォーム)などの開発・販売を手掛ける合弁会社設立について合意し、合弁契約を締結した。富士通が新会社「アクセスネットワークテクノロジ株式会社」を設立。NTTドコモとNEC、富士通セミコンダクターが出資し、8月中に合弁事業を開始する予定である。
富士通とNTTドコモ、NEC、富士通セミコンダクターの4社は、スマートフォン向けの通信モデム機能を集積する半導体製品の開発・販売を手掛ける合弁会社設立について合意し、合弁契約を締結した。4社が2012年8月1日に発表した。
富士通が2012年8月1日付で「アクセスネットワークテクノロジ株式会社」を設立。その新会社に対し、2012年8月中にNTTドコモとNEC、富士通セミコンダクターが出資して、合弁事業を開始する予定だとする。
新会社では、ベースベンド処理LSIを中核とした、いわゆる通信プラットフォームを製品化し、端末メーカーに売り込む。国内の端末メーカーに加えて、中国を含む海外の端末メーカーも狙う。携帯電話の最先端通信方式であるLTE(Long Term Evolution)に対応した製品を開発する他、次世代方式のLTE-Advancedや、そのさらに先にある第5世代(5G)以降に向けた研究にも取り組むという。ただし、ベースバンド処理回路のIP(知的財産)をいずれの企業が提供するかについては、「現時点では公表していない」(富士通の広報担当者)。
4社が発表した報道資料によると、これまで通信プラットフォームは、ドコモおよび富士通やNECを含む端末メーカー各社が共同で開発してきた。そして、ここにきてスマートフォン市場が急激に拡大し、データ通信量が増大していることなどを受け、「通信プラットフォームの重要性が増しており、各社が有する技術や、これまでの共同開発による成果は、今後グローバルにますます拡大が予測されるスマートフォン市場において、高い競争優位性を有する」と分析している。
4社は報道発表資料の中で、「これらの背景を踏まえ、新たな事業形態のもとで、合弁会社は、経営の機動力を高めるとともに、各社の技術を融合して世界に先駆けた通信プラットフォーム製品を開発し、顧客のニーズに合った市場競争力のある製品を提供していく」と述べている。
新会社のアクセスネットワークテクノロジに対する各社の出資比率は、富士通が52.8%、NTTドコモが19.9%、NECが17.8%、富士通セミコンダクターが9.5%になる。新会社の本社は、神奈川県川崎市高津区にあるかながわサイエンスパーク内に置く。資本金は1億円で、従業員数は約85名としている。
携帯電話向け通信プラットフォームの開発では、NTTドコモが2011年12月に、富士通、富士通セミコンダクター、NEC、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、Samsung Electronicsの5社と合弁会社を設立する計画を公表、合弁契約を結んで準備会社を立ち上げたが、2012年4月になって、「目標とする2012年3月末日までに当事者間で最終合意に至らなかった」(NTTドコモ)として同契約を解消したと発表していた。
今回明らかになった新たな合弁会社には、パナソニック モバイルコミュニケーションズとSamsung Electronicsが参加していない。これについては、「交渉の経緯は明かせないが、結果としてはこういう形になった」(富士通の広報担当者)としている。
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