「Cisco Connected Mobile Experience」は、Wi-Fiネットワークを使いエリア内にある携帯端末を自動で認識し、端末の位置情報を基にロケーション解析や来場者の行動パターンを可視化することができるソリューションである。
Cisco Systemsの日本法人であるシスコシステムズは2013年3月14日、東京都内で会見を開き、Wi-Fi位置情報を活用したソリューション「Cisco Connected Mobile Experience」の出荷を始めたと発表した。
Cisco Connected Mobile Experienceを使えば、空港施設や商業施設などに敷設したWi-Fiネットワーク環境で、エリア内にあるスマートフォンなどの携帯端末を自動で認識し、その位置情報を基にロケーション解析や来場者の行動パターンを可視化できる。海外の空港や博物館などで一部運用が始まっており、来場者が施設内の移動をスムーズに行えたり、利用者に適した店舗の情報をタイムリーに提供することで売り上げが拡大したりするなど、具体的な成果に結び付いているという。
Cisco Systemsは、2012年9月にThinkSmart Technologiesの買収を発表した。Cisco Connected Mobile Experienceは、そのThinkSmart Technologiesが提供していたWi-Fiネットワークを利用したロケーション解析機能と、シスコシステムズの無線LAN統合プラットフォーム「モビリティサービスエンジン(MSE:Mobility Services Engine)」に搭載されたロケーションサービスや解析機能などを統合して構築されたソリューションである。MSEを利用したアプリケーションとサービスを開発するためのソフトウェア開発キットも提供する。これらのソリューションの概要は2012年11月に発表している。
Cisco Connected Mobile Experienceのシステムは、サービスエリア内に設けられる複数のWi-Fiネットワーク用アクセスポイントおよびコントローラ、MSE、サービスを受けるために必要とされるプログラムを携帯端末に送るためのモバイルアプリケーションサーバなどで構成される。利用者が携帯する端末は、Qualcommの最新ICチップ「Snapdragon」が搭載された端末であれば、サービス専用のアプリケーションをダウンロードすることなく、自動的にサービスを受けられるという。
Cisco Connected Mobile Experienceに対応するWi-Fiネットワークが導入された空港や博物館、大学、病院、大規模商業施設などでは、登録済みの携帯端末を持った利用者がサービスエリア内に入ると、その携帯端末が自動的に検知され、MSE側でデータの収集と保存を行う。そして、アクセスポイントから割り出した携帯端末の位置情報を基に、ロケーション解析が行われ、必要に応じて携帯端末に施設内の経路や買い物の案内といった関連情報が配信される。新たな情報サービスを受けるために端末側で必要となるプログラムはモバイルアプリケーションサーバよりダウンロードすることもできる。
一方、システムの運営者は、ロケーション解析に基づき、施設利用者の行動パターン(動線)やゾーンごとの滞留時間などを分析し可視化することで、サービスの向上につなげることができる。Cisco Systemsのグローバルプロダクトマーケティングディレクタを務めるBrenda O’Brien氏は「得られたデータを分析することによって、店舗のレイアウトを変更したり、時間帯などによって混雑するゲートやレジが分かれば、そこの担当者を増員して利用者の流れをスムーズにしたりすることも可能となる」と述べた。
会見では、米国のファーンバンク自然史博物館や、デンマークのコペンハーゲン空港などにおける導入事例も紹介された。例えば、ファーンバンク自然史博物館では、児童の来場者に対して、恐竜が展示された場所に来ると自分の携帯端末でその鳴き声を聞くことができたり、次の展示物へ移動中にパズルを楽しんだりすることができるようなサービスを行っているという。また、コペンハーゲン空港では、チェックインカウンターなどの混雑状況を把握した上で、スタッフや保安要員を再配置することにより混雑を緩和し、空港内オペレーションの改善につながったケースなどを紹介した。
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