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低価格LTEチップで、Qualcommに挑む新興企業ビジネスニュース 企業動向

モバイル機器の普及やモノのインターネット(IoT)の浸透に伴い、無線通信は順調に成長すると予測されている市場だ。Altair Semiconductorは、LTEチップの低コスト化を図り、無線LANからシェアを奪うことを狙っているという。

» 2013年06月28日 11時57分 公開
[Rick Merritt,EE Times]

 Altair Semiconductorは、モバイル機器やモノのインターネット(IoT:Internet of Things)向けの無線LAN通信機能に対抗すべく、2013年をめどにLTEの低コスト化を目指すという。台湾のQuanta Computerなどをはじめ、次世代半導体チップや新型モジュールを手掛けるサプライヤとともに、最大のライバルであるQualcommに立ち向かっていきたい考えだ。

 Altairの共同創設者であり、マーケティング担当バイスプレジデントを務めるEran Eshed氏は、「LTEを無線LAN並みにコストダウンすることを目標としている。現在、無線LANを機器に搭載するためのコストは約10米ドルだが、LTEの場合は約150〜200米ドルもかかる。LTEのコストを30〜50米ドルに抑えることができれば、重大な転換期を迎えることができるだろう」と述べている。

 Altairは、かつてWiMAX技術を手掛けていた数少ない新興企業の1つだ。WiMAXは、Intelが主導して普及に努めてきた無線通信規格だが、Intelは以前ほど同規格に力を入れていない。Altairは、同社の競合であるSequans Communicationsと同様に、LTE分野だけに注力するという目標を掲げている。その背景には、もともとの企業特性から、3Gセルラー技術が不十分という問題を抱えていたこともある。

 だがAltairは、3G技術が欠けている点に自社の価値を見いだした。Eshed氏は、「当社のLTEチップは、小型かつ低価格を実現している。3G通信機能をサポートする必要がないため、モジュールに搭載すれば、モジュールの小型化と部品コスト(BOM)の削減が可能になる」と主張する。

 Eshed氏によれば、3Gフィルタなどの部品コストは、回路基板レベルで3〜6米ドルだ。さらに、3Gの特許ライセンスが5〜10米ドルほど上乗せされるという。

 Altairが手掛ける次世代LTE対応チップは、製造プロセスの微細化に伴い、ダイ面積の小型化を実現している。同社は今後、ローエンドのIoT市場から、キャリアアグリゲーションを規定したLTE-Advancedに対応するタブレット端末といったハイエンド機器までを対象に、LTE対応のチップを展開する予定だという。

 Quanta Computerは、Altairの既存のチップを搭載した低コストのLTEモジュールを手掛けており、Verizon Wirelesによって採用されている。Eshed氏は、「当社は、重要なデザインウィンを獲得している。2013年後半には、タブレット端末や超薄型ノートPC向けのモジュールをこれまでにない低コストで実現できる予定だ」と述べている。

強豪がひしめく市場

 Altairの最大のライバル企業であるQualcommは、携帯電話機向けモジュール市場における最大手メーカーだ。同社のチップは、Sierra WirelessやNovotelなど各社メーカーのモジュールで採用されている。しかしErshed氏によると、Qualcommのチップには、QuantaやAltairの製造業者であれば削減可能な、高い利幅が確保されているという。

 Qualcommの他にも、手ごわい競合メーカーは数多く存在する。BroadcomやMarvell Technology Group、MediaTek、Texas Instrumentsといったさまざまなメーカーが、携帯電話機向けモジュール市場や、台頭するIoT市場を狙っている。低価格のLTE対応モジュールを武器に市場で優位性を獲得するのは、簡単ではない。しかし、競争が激化することで、2014年には興味深いデザインウィンが続々と登場する可能性がある。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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