クイズ番組で人間のチャンピオンに勝利したことで、一躍有名になったIBMの人工知能「Watson」。このWatsonのアプリケーションプログラムが、ソフトウェア開発者向けに公開される。IBMは、「これによって現時点では想像もつかないような新たなソリューションの誕生を期待する」と述べている。
IBMは、同社が開発した人工知能システム「Watson」のアプリケーションプログラムを一般に公開すると発表した。ソフトウェア開発者向けの新しいクラウドサービスで、サードパーティのアプリケーション開発者が、クラウド経由でWatsonのコグニティブ(認知)コンピューティング能力を活用できる。なお、同サービスの正式名称は「IBM Watson Developers Cloud」である。Watsonは、2011年に米国のクイズ番組「Jeopardy!」で人間のチャンピオンに勝った実績を持つ。
現在、Watsonにアクセスできるのは、選ばれた数社のソフトウェア開発企業だけだ。IBMは、Watson Developers Cloudの実施に向け、専門家だけでなく一般ユーザー向けにも多種多様なアプリケーションを用意しているという。
IBMのSoftware Solution Groupでシニアバイスプレジデントを務めるMichael Rhodin氏は、「Watson Developers Cloudによって、一般のソフトウェア開発者がWatsonの優れたコンピューティング能力を利用しやすくなる。同サービスが、現時点では想像もできないような新たなソリューションの誕生に結び付くことを期待している」と述べている。
アプリケーション開発者は、開発者向けツールキットとアプリケーションプログラムインタフェースを使って、Watsonにアクセスする。アプリケーションでは、開発者独自のデータベースを使うことも、IBMの「Watson Content Store」を利用することもできる。Watson Content Storeは、健康分野に特化した検索エンジンHealthlineのリファレンスライブラリなど、サードパーティのコンテンツ情報も盛り込んだIBM独自の情報ライブラリである。
IBMは、500以上の分野にわたる専門家をそろえ、サードパーティのアプリケーション開発者に対してコンサルティングも行う計画だという。
クラウドソーシング大手ElanceでCEO(最高経営責任者)を務めるFabio Rosati氏は、「Watsonはインターネット以来の偉大な発明であり、大きな可能性を秘めている」と述べている。
Elanceは既にIBMと協力して、アプリケーション開発者が、300万人を超えるフリーランスの登録者を照会できるクラウドサービスを開発している。同社の登録者の多くは、Watsonの認証プログラムを修了する予定だという。
IBMは、アプリケーション開発者向けのテストやトレーニング、サービスなどを実施する計画も明らかにしている。ベンチャーキャピタルと協力して、有望な新アプリケーションのアイデアを発掘し、開発者をサポートしていく考えだ。
Elanceの他にも、ソフトウェア開発企業数社がIBMと協力して、2014年にリリース予定のアプリケーションの開発に取り組んでいるという。具体的には、Eコマースソリューションを提供するFluid Retailの「Expert Personal Shopper(エキスパートパーソナルショッパー)」システムや、健康管理システムの開発を手掛けるWelltokの「Intelligent Health Itineraries(インテリジェンス健康管理)」システム、医療分野向けのソリューションを開発するMD Buylineの医療機器の購入決定に関わる情報提供システムなどがある。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.