SSD業界では、SanDiskがエンタープライズ向けSSDメーカーのSMART Storage Systemsを買収するなど、買収の動きが進んでいる。
2013年のSSD(Solid State Drive)市場は、移行期に差し掛かっている。ストレージ/ネットワーク分野の半導体ベンダーであるLSIでCEO(最高経営責任者)を務めるAbhi Talwalkar氏にとっては、予想外の動きとなった。
LSIは2011年に、SSDのコントローラICなどを手掛ける新興企業SandForceを3億7000万米ドルで買収している。Talwalkar氏はこの買収によって、2013年のSSDコントローラ市場において約35%の成長率を達成できると見込んでいた。しかし実際には、わずか10%の成長率にとどまっている。
Talwalkar氏が獲得できると期待していた市場シェアの大半は、Samsung Electronicsに持っていかれた格好だ。Samsungは、独自に開発したNAND型フラッシュメモリチップやコントローラを搭載したSSDの供給を開始し、シェアを伸ばすことに成功した。SandForceがこれまでコントローラを供給してきた、比較的小規模な独立型のメーカーは、垂直統合型メーカーの巨人であるSamsungやSanDiskなどにシェアを奪われている状況にある。
このような市場の変化は、2011年頃から現れ始めた。その当時、NAND型フラッシュメモリメーカーは、メモリチップ市場が供給過剰の状態にあると判断し、ファブの設備投資を削減していた。
その結果、2013年におけるNAND型フラッシュメモリの販売価格は、約20%上昇したとTalwalkar氏は見込んでいる。同時に、SamsungをはじめとするNAND型フラッシュメモリチップメーカーは、自社開発したSSDの製造販売を強化し始めた。
Talwalkar氏は、EE Timesのインタビューに対し、「NAND型フラッシュメモリメーカーは、2010年のSSD市場ではわずかなシェアしか獲得できていなかった。だが、今後2〜4年以内に、クライアントSSD市場において70〜80%のシェアを獲得するだろう。残るシェアのうち5〜10%を獲得できるのは、独自のビジネスモデルを構築したり、特定の垂直市場や販売モデルに注力することに成功した、一部の独立型SSDメーカーだけに限られるだろう」と述べる。同氏は、このようなSSDメーカーの例として、現在も力強く生き残っているKingston TechnologyやAvant Technology、OCZ Technology Groupなどの名前を挙げた。
米国の市場調査会社であるWeb-Feet Researchでプリンシパルアナリストを務めるAlan Niebel氏は、「NAND型フラッシュメモリメーカーやPCメーカーは、SSD市場参入に向けた取り組みの一環として、既に一部の独立型SSD/コントローラメーカーの買収を手掛けている。買収されたメーカーには、sTecやSMART Storage Systems、Virident、FlashSoft、Link A Mediaなどがある」と述べている。
2013年にNAND型フラッシュメモリの販売価格を上昇させた要因の1つとして挙げられるのが、SK Hynixが中国 無錫に置く大規模工場において同年夏に発生した火災だ。Niebel氏は、「この火災によって、DRAM生産量に影響が及び、供給不足に陥ることを恐れた数多くの機器メーカーが、NAND型フラッシュメモリの確保に動いた」と述べる。
米国の市場調査会社であるObjective AnalysisのNAND型フラッシュメモリ市場アナリストであるJim Handy氏は、「現在のNAND型フラッシュメモリの供給不足は、設備投資の削減による影響を受けて生じたものであるため、2013年後半から2015年半ば頃まで続く見込みだ」と予測する。
Handy氏は、「現在、IM Flashを除くほとんどのメモリメーカーが、高誘電率膜/金属ゲート(HKMG:High-k/Metal Gate)技術や3次元積層技術など新しい技術への移行を進めている。このため、今後さまざまな課題が山積みとなって、供給不足の状態が2016〜2017年まで続く可能性もある」と指摘する。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.