アップルとサムスン電子は、2回目となる特許裁判を行っている。裁判では両社の社内文書/内部報告書が提出された。そこでは、故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏のメールの一部も公開されている。
特許をめぐるAppleとSamsung Electronicsの裁判が米カリフォルニア州サンノゼで行われている(関連記事:アップル対サムスン、特許係争再び)。法廷証言の中で、AppleはSamsungの2010年の社内文書を公開した。この文書は、Appleが特許を持つiPhoneの機能をコピーすることを勧める内容となっている。
一方のSamsungは、Steve Jobs氏が発信したものを含むAppleの社内メールを公開した。これらのメールでは、2013年にAppleがSamsung製品をはじめとするAndroidスマートフォンの機能に対抗する必要に強く迫られていたことを示唆している。
Appleのマーケティング部門を率いるPhil Schiller氏が証人の1人として証言台に立った。
Appleに有利な証言をしたコンピュータサイエンスのある専門家は、Samsung製のスマートフォン6機種の複数のモデルが、いわゆる「スライド式ロック解除(slide-to-unlock、特許番号172)」の特許を侵害していると述べた。この専門家は証拠としてSamsungの2010年の社内文書から複数のページを示している。
社内文書では複数のページにわたって、Samsungのスマートフォンの試作品と「iPhone」の写真を並べて比較している。また、Samsungのスマートフォン試作品を細かく改変し、よりiPhoneに近いようにロック解除できるようにすることを勧めている。
例えば、Samsungの2010年3月のソフトウェアユーザビリティに関する報告書のあるページでは、iPhoneのロック解除機能とSamsungのスマートフォンの試作品(コードネーム:Amethyst)の同機能が比較されていた。文書ではAmethystを批判していて、Samsungの設計チームに対し「iPhoneのようにロック解除の動作がスムーズになるように」と勧めていた。
Appleは18カ月前の最初の裁判でも、SamsungのスマートフォンとiPhoneを比較した類似の報告書を示した。SamsungのスマートフォンがiPhoneの機能をかなり模倣しているというのがおおむねの主張だった。
一方、SamsungはApple側の証言に先立ち、Samsungがユーザーの間でブランド認知を高めていることを示唆するAppleの2013年の内部報告書とメールを提示した。この報告書とメールでは、当時AppleがSamsungのスマートフォン「Galaxy」の成功に追随するため、iPhone5にもGalaxyと同様の大型ディスプレイとバッテリを搭載し、低価格で販売することを計画していたことがうかがえる。
Appleの2013年4月の営業関連文書には、「消費者は、4インチ以上のディスプレイや300米ドル以下という、Appleのスマートフォンにはないものを求めている」とある。Schiller氏は、これは1人の営業部員の見解であり、Appleの立場を示したものではないとして、Samsung側の主張をはねのけた。
その後Samsungは、故Steve Jobs氏のメールを提出した。2011年におけるAppleの戦略を、同社の幹部100人と話し合った際の議題が書かれたものだ。そのメールの中でJobs氏は、「Googleとの“聖戦”が今回の主な議題だ」と書いている。Schiller氏はこのメールについて、「Jobs氏は、幹部たちがGoogle(Android)を真剣にライバル視していないと考えていた。それではいけないと思い、彼らをたきつけただけのことだ」との見解を示している。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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