Microchip Technology(マイクロチップ・テクノロジー)は、売上高予測を下方修正し、半導体業界の低迷への懸念を示唆した。だが、半導体業界は本当に低迷しているのだろうか。
Microchip Technologyは2014年10月9日に、同社の7〜9月期(2015会計年度第2四半期)の売上高予測を下方修正し、半導体市場の低迷を示唆した。マクロ経済の減速と半導体産業の暗い先行きを予測したわけだが、果たしてそれは正しい見立てだろうか。先走った見方とはいえないだろうか。
業界の中には、今四半期の停滞の兆しが“季節的なもの”という見方もある。
IntelとLinear Technologyは両社とも、2014年10月15日に行ったカンファレンスコールの中で、MicrochipのCEOであるSteve Sanghi氏が予測した「急速な市場調整」を示すような変化は何一つ見当たらないと強調した(関連記事:Intelの2014年7-9月期売上高は過去最高、半導体業界の低迷懸念を一掃)。
Linear Technologyの2015会計年度第1四半期(2014年7〜9月期)の売上高は、前年同期比9%増の3億7110万米ドルだった。同年前期比での増加率はわずか1.5%にとどまった。一方、利益は前年同期比で20%増となる1億2950億米ドルだったが、同年前期からは30万米ドル減少した。
Linear Technologyはややネガティブな兆しにも言及した。受注率が前年同期に比べて減少し、出荷受注比率がわずかに下がったという。
Linear TechnologyのCFOであるPaul Coghlan氏は「受注率の減少は主に米国内でみられた」と述べた上で、減少の程度は前年度に経験したものとおおむね同じであるとした。
Coghlan氏は世界的なマクロ経済に停滞の兆しがある点を認めたものの、それについて「停滞しながらも回復途上にあり、停滞の傾向が強いわけではない」と分析した。ただし、深刻化するウクライナ問題による欧州経済の停滞には言及した。
金融アナリストらはCoghlan氏に対し、Linear Technologyが経済の停滞を「季節的なもの」と楽観視する理由を厳しく追及している。Coghlan氏は「会社としてマクロ経済の問題は認識しているが、アナリストが危惧するほどの大きな影響はないとみている」と回答した。
さらに同氏は、「当社の指針は常に顧客やその動きを反映している」と述べた。現時点では、Linear Technologyはマクロ経済の停滞を深刻視していない。
半導体産業のアナリストの中には、半導体市場の成長の鈍化を認める声もある。
IHS TechnologyのバイスプレジデントであるDale Ford氏は、EE Timesに対し、「半導体市場は2014年第4四半期に今年の成長のピークを迎えるとみている。つまり、成長が停滞し始めると予測している」と述べた。「ただし、急激な減速はない。当社は緩やかに減速していくと見込んでいる」(同氏)。
Ford氏は、「Microchipの結果は、あくまで同社が参入している市場だけを反映しているのであって、それが半導体業界全体の動きにはつながらない」とも説明した。
「半導体業界は、常に周期的な浮き沈みを繰り返してきた。これは今後も続くだろう。現在の半導体業界の状況は、過剰な在庫や業界の不均衡などが要因ではない。製品のライフサイクルや価格設定、生産量といった数々の要素によるごく自然な動きだ」(同氏)。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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