共振器自体の構造についても最適化を進めた。共振器の中央部分に縦穴を持たない欠陥構造(L3構造と呼ぶ)を作り込み、基板に対して鉛直方向に発光が集中するようにした(図6)。これにより室温で、1.35μmと1.4μm付近に鋭い発光スペクトルが得られた。Q値*3)は約500である。
*3) Q値(Quality Factor)とは、共振器の性能指標で、共振の先鋭度を表す。ピークとなる共振周波数を共振器の半値幅で割った値であり、値が大きいほど発振が安定していることを示す。
さらに、Si基板とSi層に挟まれた埋め込みSi酸化膜をフッ化水素によって除去し、空気層に変えることで、Q値が1560に向上した。「屈折率の変化が大きくなり、光の面内閉じ込めが強くなったためだ。室温で動作するSi系の材料を用いた電流注入型発光素子としては、世界最高水準の結果だと考える」(丸泉氏)(図7)。
「一般に電流注入型発光素子では、発光強度を注入電流のm乗という形で表現できる。今回の試作品では、低電流域でm=1.39、電流の量が1mAを超えると、m=1.93となる優れた性質を示した。今回の素子をLEDとして使うことを考えると、今後、Q値を数千から1万程度まで高めることが次の目標となる。量子ドットの位置やサイズの精密な制御*4)によって、mの値を高め、3〜4年で達成したい」(丸泉氏)。具体的にはMBE法ではなく、UHVCVD(Ultrahigh Vacuum Chemical Vapor Deposition)法の採用によって実現できるとした。
*4) この他、Ge量子ドット層を増やすことでも光強度を高められる。
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