55インチの大型有機ELテレビが、2012年の夏から秋にかけて発売される。これによって、有機ELディスプレイ(OLED)の市場開拓が一気に進むと予想されている。
長らく見込まれていた有機ELディスプレイ(OLED)の潜在能力が、今ようやく現実のものになりつつある。米国の市場調査会社であるNanoMarketsは、最新のリポートの中で、「今後数年のうちに、有機EL材料のサプライヤは現在のニッチで特殊な市況を打破する多くのビジネス機会に恵まれるだろう」と予測した。
2012年第1四半期、OLEDを搭載したSamsung Electronicsのスマートフォン「Galaxy」シリーズは、Appleの「iPhone」を凌ぐ売上成長を遂げた。また、2012年の夏と秋にはLG ElectronicsとSamsungが有機ELテレビ市場に参入する見込みで、他のメーカーも近い時期に両社に続くとみられる。
DisplaySearchのシニアバイスプレジデントであるPaul Semenza氏によると、2012年の第3四半期に発売される予定の有機ELテレビは、サイズが55インチで、小売価格は8000米ドルの見込みだという。同氏は、2012年6月3日〜6月8日まで米国マサチューセッツ州ボストンで開催されたディスプレイ関連最大の学会「SID 2012」において、「55インチの有機ELテレビの価格は、2014年には、現在の55インチのハイエンドモデルの液晶テレビと同じ価格帯である2500米ドルにまで下がるだろう」と述べた。
Semenza氏は総括的な意見として、「フラットパネルディスプレイ(FPD)業界は、かつてないほど収益性の悪化に苦しみ、かつ変動の激しい時代を迎えている」と語った。極めて厳しい経済環境により、FPDメーカーは製造施設の売却や、新たな提携の締結を余儀なくされた他、製品を差別化するための技術を早急に開発するよう追い込まれた。だが、同氏によると、「FPD業界はようやく正常な状態に戻り始め、2013年には立ち直る見込みだ」という。
OLED AssociationのマネージングディレクターであるBarry Young氏は、SIDで行った講演で、OLED市場が成長曲線上にあることに同意した上で、「OLEDの出荷数は、2009年には7500万枚だったが、2011年には1億枚まで増加しており、2012年には倍増する見込みである」と述べた。同氏はまた、OLEDの売上高について、「2009年には10億米ドル未満だったが、2011年には35億米ドル以上に伸びた。2012年には80億米ドル以上に達する見込みである」と述べている。
【翻訳:山内幸代、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.